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なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
「ユイ!ユイ!」なでしこ長谷川唯はなぜ英国で愛される? “世界一の環境”マンチェスター生活「名前呼ばれるの嬉しい」「背が小さくてよかった」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byPA Images/AFLO
posted2024/05/31 11:01
マンチェスター・シティで中核を担う長谷川唯(27歳)。現地ファンからの人気も高い
長谷川は試合ではファンからの応援の違いも感じると言う。冒頭のダービー後、長谷川がファンに名前を呼ばれているシーンについて伝えると、こう返って来た。
「最初に来た頃よりは名前を呼んでくれる人は増えました。やっぱりサッカーをちゃんと見て好きになってくれてるなっていう感じがすごい強くて。試合中に名前を呼んでくれるのも、結構地味なプレーとか、普通の人が見てたら、あんまり気にならないようなタイミングだったりとかもあるので嬉しいですね。
イギリスは、女子がユーロ(2022年)で優勝してるのでやっぱりイギリス人選手の人気がある中で、そうやって名前を呼んでもらったりっていうのは個人的にも嬉しいですし本当にサッカーをすごい見てくれてるなって」
現在シティで長谷川は4−3−3のボランチでプレーする。ピンチを未然に防ぎ攻撃につながるパスを多くの場合、セーフティに前線につける、いわば黒子に徹しているがそれでも、効果的なプレーに歓声が湧く。プレーそのものを観客に見てもらっている、結果を出している地元選手に負けず劣らず人気がある、それはきっと想像以上に嬉しいはずだ。
「フィジカルを諦めない」
しかし、試合中のピッチに目をやると“身長157センチ”は群を抜いて小さい。だが、4−3−3というシステムの中央で試合を支配しているのは長谷川だ。
「監督に一番大事だと言われてるポジションでやってるので。練習からしっかりいいプレーを見せていくことで、本当にみんなに信頼してもらっているなというのは試合中も感じます。本当にいい環境で、自分の好きなスタイルでサッカーできるのは幸せな環境ではあります」
シティのサッカーは男子チームのサッカーに近く、ボールをつなぐいわゆるポジショナルプレーに縦へのスピードが加わった、長谷川が日本で慣れ親しんだベレーザのサッカーの延長線上にあるものだ。だが、以前と違うのはシティでの長谷川はボランチであるということ。最終ラインに近く屈強な選手が務めることが多いポジションで、ダービーを見る限り、長谷川が当たり負けるシーンは記憶にない。
「もちろんトレーニングでいろんなことをやってますけど、自分のタイミングで(相手に)当たれたら勝てる自信もあって、実際まともに当たっても勝てるシーンがあって。そういう意味では(小さいから)フィジカルを諦めるっていうよりは、強化しつつ、いかに自分がいいタイミングでぶつかれるかを考えています。予測のところでボールがどこに来るか、だったり、セカンドボールを拾うためにボールをずっと見てるっていうよりは先に動く。予測のところは監督からもすごく評価してもらっているんです」
“フィジカルを諦めない”。少しでも上のレベルで世界と戦うためには、華奢な日本人選手でもこれからは勝負を避けてはいられない。その上で、長谷川の場合は持ち前の予測の速さが生きてくると考えている。
「やっぱり、こっちの選手は走ったら速いし、ぶつかったら強い。でも先に考えてたら先に全然動き出せる、予測の勝負で勝ってるっていうのがあるので」
そもそも、長谷川自身、小柄だったことが予測の速さにつながっていると説明する。
「体が小さかったりして自然とやっていた部分があるので、言葉にすると『背が小さくて、難しい経験をしてよかったな』っていうことになるんです。ポジティブに言うと、『小さくてよかった』っていう」