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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「やばいっす、めっちゃ話しかけてくる!」松井裕樹はなぜパドレスで人気者に? 心を掴んだ“史上最高の入団スピーチ”「彼はすごく耳がいい」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byGetty Images
posted2024/04/26 11:02
練習したスピーチでパドレスのチームメイトやファンの心を掴んだ松井裕樹
昨年12月、パドレスと契約を交わした松井から、サカモトにスピーチについての相談があった。本拠地サンディエゴはメキシコとの国境に近く、人口のおよそ4分の1がヒスパニック・ラテン系という土地柄だ。もちろん、メキシコ人やスペイン語話者のパドレスファンも多い。東京大学在学中にメキシコでタコス屋をした経験を持ち、英語だけでなくスペイン語も解するサカモトにとっては、まさに腕の見せどころだった。
「メキシコ人しか使わないスペイン語、というのがいくつかあるんですよ。パドレスの由来にもなっている『padre』は父や神父を指す言葉ですが、メキシコのスラングでは同じ『padre』という単語が『イケてる』といった意味の形容詞にもなる。ファンの心をつかむスピーチにするために、『Padresみたいなpadreな(イケてる)チームに入れて……』といったダジャレを入れてみるのも面白いな、と」
細かい動作までこだわった予行演習
幾度もミーティングを重ね、準備されていった松井のスピーチ。「相当練習しましたよ」とサカモトは内幕を明かす。
「英語の発音や内容だけでなく、ちょっと間を入れて周りの様子を見る感じとか、『Thank you』のタイミングとか、徹底的に作り込みました。それが自然にできれば、本当に流暢に喋れる人のように見えるので。自主トレ期間に取材を受けたメディアの方にも協力してもらって、現地メディアを想定した予行演習も2回やりました。なぜそこまでこだわったのか? もちろん心を掴むことも大事ですが、純粋に『カッコよく決めたい!』という少年のような気持ちもあったんじゃないかな(笑)」
そして訪れたキャンプ初日の囲み取材、松井は英語とスペイン語を駆使した見事な入団スピーチを披露する。やや緊張した面持ちながら、「Thank you,I love you」と妻への感謝の言葉も交えて、カンペなしで約1分半。その後の質疑応答では韓国メディアの質問に韓国語でのフレーズを交えて答える一幕もあり、日本語も含めて「驚きの4カ国語対応」と話題をさらった。