甲子園の風BACK NUMBER
寒すぎるセンバツ「ガラガラ空席」甲子園で…記者が温まった“ある話”「被災した日本航空石川に…近江が電話」応援参加のウラ側「涙が出ました」
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2024/03/25 09:00
高知高校の友情応援に駆けつけた、四條畷学園マーチングバンド部。雪が舞っている
「近江高校さんの『Fire ball』で、私たちもぜひチャンスをつかみたいですね。私と樋口先生の2人の絆から生まれた今回のご縁が、生徒たちにとっても心通う交流になり、新たな絆が生まれることを願って、明日の応援に臨みたいと思います」(佐久間氏)
日本航空石川の吹奏楽部部長・九尾結月さんも、「能登の人たちの願いや感謝の気持ちを込めて、精一杯演奏したい」と笑顔で話す。
寒さも…「空気が澄んでいるので音が鳴る」
今大会では、京都外大西(京都)の応援に東邦(愛知)が、高知(高知)の応援に四條畷学園(大阪)のマーチングバンド部が駆けつけるなど、友情応援が盛んに行われている。「自校の吹奏楽部が少ない」などの事情によるものだが、吹奏楽コンクールの時期と重なる夏に比べ、春のセンバツは吹奏楽部に時間的余裕があるということも大きい。京都国際(京都)の応援に駆けつけた、京都産業大学附属吹奏楽部顧問・松山航氏も、「夏は、試合日とコンクールの日程が近いと応援を引き受けるのが難しい場合もありますが、春はそのような心配もないため、心おきなくのびのびと応援できますね」と話す。
連日の寒さも「空気が澄んでいるので音がよく鳴る」と、四條畷学園マーチングバンド部で指導する今川直紀氏も話すように、気温や湿度の高い夏よりもはるかによく響くなど、悪いことばかりではない。「とはいえ、あまり寒すぎるとピッチ(音程)が合わなくて、それはそれで苦労するんですけどね」と笑う。観客が多いと音が洋服に吸い込まれてあまり反響しないが、空席が多くプラスチックの椅子が目立つと、「アルプススタンドから飛んだ音がよく跳ね返ってくるなあ……」と、吹奏楽部出身の筆者も実感している。
暑すぎても寒すぎても厳しいアルプススタンドの応援。春らしい気候になってくれることを願いつつ、吹奏楽部の生徒たちも熱のこもったエールを送り続ける。