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猛牛のささやきBACK NUMBER
「自分と戦わなくてよくなった」吉田輝星が明かす確かな手応え…日本ハム→オリックスの首脳陣が密かに練り上げた「覚醒計画」とは
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/03/12 11:04
新天地で再起をかける吉田輝星
「(自身が)オリックスに来てからもいつも輝星のことは気にしながら見ていました。彼はもっと出力を上げられるピッチャーだと思っているので、中垣さんにお願いして、タイミングを変えてもらっている感じです。力を入れる場所だったり、体重移動だったり、ピッチャーはちょっとしたところで習慣がついてしまって、それがその選手にとって悪い癖だったりもする。それを直したらもっとすごくなるんじゃないかという僕なりの疑いがあったので。せっかく獲得できたので……。
輝星に関してはマウンドさばきだったり、バッターが嫌がるストレートの質だったり、いいところがたくさんある。ただメカニックの中で少し悪い癖がついていたので。改造中です。本人も前向きに取り組んでくれています。思うところがあったんでしょうね」
「いろんなことを期待されすぎて…」
中垣コーチも慎重に言葉を選びながらこう語った。
「まだ評価するところまでは来ていないんですけど、本人が『これでやっていくぞ』という指針になるものを作ってあげられたらいいなと思っています。それは誰に対しても同じなんですけどね。
彼はたぶんいろんなことを期待されすぎて、いろんなことをいろんなところで言われてきたと思う。持っているものがいいから(ドラフトで)1番に選ばれて、プロに入ってきているはずだから、なんとか、投球動作の中で力をコンスタントに発揮するにはどうしたらいいか、そこに集中するための要素だけを話すようにしています。
ここはちょっと余分かなと思うところは削ぎ落として、ここはいいぞというところはより強調する。足りない要素に関しては少しサポートしながら身につけさせていく。そんな感じです。いつも通りです」
スペックの高い選手
吉田の“いいところ”とは?
「体が強いし、全体のサイズの割に体の出力がものすごく大きい。サイズ感が少し足りないピッチャーにとって大事な、胸の柔らかさをすごく持っているので、噛み合えば……。(高3夏に)1人であれだけ投げたわけですからね。なんか持ってなきゃそんなことできないから。身体能力的に非常にスペックの高い選手だと思うので、そこが投球の中でどううまく噛み合うかですね」
中垣コーチも厚澤コーチも、高校時代の吉田のことはほとんど知らないという。それでも「もっとできる」と思わせるものを、吉田は持っている。