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猛牛のささやきBACK NUMBER
「自分と戦わなくてよくなった」吉田輝星が明かす確かな手応え…日本ハム→オリックスの首脳陣が密かに練り上げた「覚醒計画」とは
posted2024/03/12 11:04
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Hideki Sugiyama
「マウンドは俺の縄張り」
6年前の夏の甲子園、決勝前夜。金足農業高のエースだった吉田輝星が、帽子のつばの裏に太字で書き込んだ言葉だ。
準決勝までの5試合すべて1人で完投し、すでに749球を投じていた疲労はさすがに隠せず、決勝では大阪桐蔭高打線に捕まり途中降板したが、あの言葉は、マウンドでの吉田の覚悟や立ち居振る舞いを表しているようだった。
打者を見下ろしているような、いい意味でのふてぶてしさがあった。威圧感のある浮き上がるストレートはもちろん、ポンポンとテンポよく投げ込んだかと思えば、時にはじりじりするほど長い間を取るなど、マウンドでは打者の心理も球場の雰囲気も、吉田が支配しているかのようだった。
新天地での再出発
昨年11月に黒木優太との交換トレードで日本ハムからオリックスに移籍し、新天地でのシーズンをスタートした吉田に、高校時代に取材した際のそんな印象を伝えると、こう語った。
「ピッチャーが動かないと試合は始まらないし、自分がやってきたことを信じて、いい意味で自分のほうが上だというのを言い聞かせて堂々と投げるというのは、試合の時に限ってはすごく大事だと思いますね」
でも、と続けた。
「プロのバッターだとなかなか、そういけないことも多いですけど。自分と戦っている時はだいたいできない。どうバッターを抑えるかということだけに集中できている時は、『このバッターはこれが弱いから』といったことを考えられるんで、だいたい抑えられていると思います。でも、今日調子悪いなとか、なんかフォームがこうでこうで、とか考えていたら、体もだんだん動かなくなってくる。そういうのは今のところ、オリックスに来てからはないので、うまく試合に入れているかなと思いますね」