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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「僕は“助っ人外国人”なんです」ベネズエラで2年連続盗塁王&オールスター初出場、元DeNA乙坂智が感じた“2年目の重圧”<エスコバー、ロペスと再会も>
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2024/02/26 11:02
2022年に続いてベネズエラのブラボスでプレーした乙坂智。オールスターにも初出場を果たしたが、本人にとっては「重圧」のあったシーズンだったという
「厳しい道のりだけど、わかっていたこと。次から次へ課題や障害が出てくるけど、そこで諦めたら人間的に止まっちゃうし、可能性があるかぎりは続けなきゃいけないんですよ。ここまで自分の無力さに打ちひしがれてばかりでしたけど、それを乗り越えるのがむっちゃ楽しいし、『もっと頑張れ、俺!』みたいな」
人間いたるところ青山あり
そう言って乙坂は笑った。苦難をも呑み込み自分の力にしてやろうという気概に満ちていた。つらい時に思い出すのは、2年前、海外に渡る時に横浜高校の恩師である渡辺元智監督から送られた言葉だ。
『人間いたるところ青山あり』
「古いことわざらしいんですけど、人間はどこにでも骨を埋める場所ぐらいはある、という意味で、死ぬ場所があれば生きる場所もある。大志を抱き、日本を出て海外で大いに活躍すればいい。たくましい人間になるための修行だと思って行って来い、と。実際、この2年間は、僕の30年の人生の中でも圧倒的な意味を持っています。自分自身を知る旅だったり、生きてきた人生を考えるタイミングだったり」
目標がその日その日を支配する
MLBを目指す野球人・乙坂智の旅路はまだ途中であり、これまでと同じように前人未到の領域を歩むこととなる。
「突き進まなきゃいけないと思っています。海外FAやポスティングじゃなく、MLBを目指す後進たちのためにも、こういったルートもあるんだよってことを示したい。なにより大事なのは覚悟ですよ。これも渡辺監督の言葉なんですけど『三笠山に登る第一歩。富士山に登る第一歩。同じ一歩でも覚悟が違う。どこまで行くつもりか。どこまで登るつもりか。目標がその日その日を支配する』という教えを思い出すんです。人間ね、“魂”ですよ、すべては。心が体を動かすんですからね」
そう思いを吐露すると、乙坂は清々しい表情を見せてくれた。誰に何と言われようと行動し、決断できるのは自分だけ。挑戦することの素晴らしさ、自分にとっての幸せを求め生きるたくましさ。乙坂の行動には、人生を豊かに歩むヒントがたくさん詰まっている。もう行けるところまで、行くしかない――。
<「アメリカ独立リーグ編」とあわせてお読みください>