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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「僕は“助っ人外国人”なんです」ベネズエラで2年連続盗塁王&オールスター初出場、元DeNA乙坂智が感じた“2年目の重圧”<エスコバー、ロペスと再会も>
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2024/02/26 11:02
2022年に続いてベネズエラのブラボスでプレーした乙坂智。オールスターにも初出場を果たしたが、本人にとっては「重圧」のあったシーズンだったという
「久しぶりに会えて嬉しかったですね。二人とは以前よりもスペイン語でコミュニケーションとれたんですけど、エスコバーは疲れていたのかあんまりしゃべれなかったんです。チャモさん(ロペス)とは間合いの話になって『アメリカもベネズエラも動き出しを早くした方がいい』と、教えてくれました。その試合で4安打できて、終わった後にお礼を伝えに行ったら、対戦相手は以前チャモさんが所属していたチームで『あんまり打つなよ』って(笑)。思ったのは、自分が本気で頑張っていれば、周りの人にも伝わるんだなってこと。いいエネルギーを頂きましたね」
オールスターにも選出
MLBを目指すという大前提の中、乙坂はチームのために働いて結果を出し、ブラボスは上位戦線にからんでいく。そうこうしているうちに乙坂は、当地で6年ぶりに開催されるオールスターゲームに選出された。ファンと記者50%ずつの割合によって選ばれる栄誉ある立場。招待のレターが届いた時は驚いたという。
「びっくりしたけど嬉しかったですよね。なぜかベネズエラで好かれているみたいで、日本人選手があまりいない状況ですし、よくインタビューで『ベネズエラ、大好き!』と言っていたら、いろんな球場で声を掛けられるようになったんですよ」
知名度も上がっていた中で経験したオールスターゲームで脱帽したのは、昨年のMLBナショナルリーグMVPのロナルド・アクーニャ・ジュニアの存在感だった。乙坂は前年、エスコバーの従兄弟でもあるアクーニャとコミュニケーションをとって打撃のアドバイスを受けている。
「オールスターでのアクーニャの絶対的存在感。一挙手一投足に全員が注目しているし、放っている輝きがとにかく違うんですよ。これがスーパースターなんだってスケール感には圧倒されましたね」
アクーニャJr.の“暴走”に見たスター性
リーグ戦でアクーニャと対峙して忘れられないシーンが乙坂にはある。
「初めて対戦した試合でした。二人とも1番打者だったんですけど、先攻の第一打席でアクーニャはどんな感じなのかセンターから見ていたんです。で、初球のストライクを見逃して、2球目のインローを鋭く振り抜いて、僕の真上を越えていく弾丸ライナーのホームラン。すごかったし、それで球場の雰囲気を全部持って行ってしまったんです」
本物のメジャーリーガーの実力と華のある姿を間近で見て、乙坂は武者震いする思いだった。