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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「高校では一度もベンチ入り経験なし」でも大学時代は“MAX120km台”で空振り量産…ソフバンキャンプで見つけた《育成10位》隠れた「逸材」のナゾ
posted2024/02/27 06:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
日本文理大公式HPより
5日間の宮崎キャンプ取材は、あっという間だった。
時間は「5日間」なのに、キャンプ地は、ファームのキャンプも入れたら、オリックス、ソフトバンク、西武、巨人、広島、ヤクルトと6球団。巨人、広島、オリックス、ソフトバンクは、一軍とファームの両方が宮崎でキャンプを行っているので、勘定が合わないからとても忙しい。
めったに行けない宮崎・南九州である。どうしても、欲張りにもなる。
2月のキャンプ期間中は、宮崎のホテルがぐんと高くなる。都城から宮崎、レンタカーで片道1時間の「通勤」になるが、この1時間がなかなか貴重で、頭を整理したり、南九州の風景を味わったり、私にとっては結構有意義な時間になってくれる。
ソフトバンク一軍内野陣の緊張感あふれる守備ワーク、吉田正尚(レッドソックス)が抜けても喪失感が漂わないオリックスの中軸打者たちの打撃練習。一軍キャンプのプレーにも目を奪われるが、もう一つのキャンプの魅力は「新戦力」だ。
キャンプで見つけた「育成10位」の逸材候補
主力投手陣の投球練習が終わったソフトバンクキャンプのブルペンに、入れ替り、立ち替り、若手投手たちがやってくる。
ひとりの長身左腕のピッチング練習に目を奪われた。
背番号167・前田純(189cm85kg・左投左打)、日本文理大(大分)から入団した2年目の育成選手である。
これだけのサイズがあって若手のサウスポーなら、普通はもっと「左腕独特のアンバランス」があるものだが、それがない。軸足(左足)できれいに立って、両肩のラインがしっかり捕手の方向を向いたまま踏み込むと、一瞬の間があってから、リリースでビシッとボールを切っている。
右足の踏み込みとリリースのタイミングがピシャリ合った時のストレートの「伸び感」が素晴らしい。今は、5球に1球ほどだが、バックスピン抜群の快速球が、高い位置から痛烈にミットに突き刺さる。
「ナイスボール!」と、捕手から祝福の爆声が上がる。
その瞬間、パッと花が咲いたような笑顔がまぶしい。1球、1球、ボールを捕手から受け捕り、プレートを踏み込んでいく時の表情がいい。