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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「コーチの言うことをガン無視する」浅野翔吾の“大器” 「小林誠司は巨人の財産」デーブ大久保が“忖度なし”で語る阿部ジャイアンツの希望と課題
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/30 11:18
常勝軍団の復活を目指す阿部慎之助監督
――バッティングの課題としてはどんなことが挙げられますか?
大久保 彼は自分のタイミングでは“マン振り”できるけど、プロの世界ではタイミングが合わなかった時に、それがどうできるかというところなんですね。プロのピッチャーは色んな技術を使って、いかにバッターの身体を前に出すかで勝負してくるし、やっぱりバッターは出されるんです。それを嫌がれば、今度は差し込まれる。そこなんですよ。それができれば、すぐにレギュラーをとれますよ。
――将来的には中心打者として打線の軸になれる選手なのは間違いないですよね。
大久保 3番、5番……でも、そのためにはまだまだ作り込まなければだめですよね。彼は激変する可能性を持っているし、その時にはレギュラーでクリーンアップを任せられる選手になる可能性を持った選手だと思います。西武の栗山(功外野手)は元々は不器用な選手でしたが、努力で2000本安打を打っちゃった選手ですよね。浅野は栗山よりはるかにパワーもあるし、反対方向に強い打球も打てる力は秘めています。だからあと必要なのは……コーチの意見を聞きながらプロとして作り込んでいく作業なんだと思います。
セカンド争いは中山にも勝機
――門脇、秋広に浅野とブレークが期待される若手選手への評価を伺ってきましたが、この3人以外で大久保さんがこれは、と思う選手がいたら教えて下さい。
大久保 僕は今年は礼都がセカンドのレギュラーをとる可能性があると思っているんですよ。
――中山礼都内野手ですね。ただ今季の巨人は坂本勇人内野手が三塁に回り、遊撃には門脇誠内野手、一塁には岡本和真内野手が固定されることになります。その上で二塁のレギュラー候補には吉川尚輝内野手がいます。
大久保 尚輝はねえ……コンディショニングの問題とかもあって、なかなか練習量が積めない。ただ昨秋のキャンプに参加したということは、本人も腰が悪いと言っていても、それどころじゃないな、って気がついたから行ったんでしょう。阿部監督もこれでダメだったらいらないんだぞ、っていうね、温情プラス冷酷なところも出したと思うんですよ。『行きます!』っていう答えが欲しかったんだと思います。それをやりきったところに、まだ尚輝もいけるかなという期待は抱きますよね。ただ尚輝のコンディションがちょっとでも悪かったりしたら、昨シーズンの終盤あたりから気持ちの変わった礼都にも十分にチャンスがあると思っています。
――コーチとして昨年1年間、中山を指導してかなり手応えがあったということですか?
大久保 巨人って“個人”なんですよ。それは巨人の伝統みたいなところもあって、あんまりああしろ、こうしろって上が強制しない。だから去年も僕らが練習をやらせると、ハレーションが起こるんです。『何でこんなことやるんだ』と。礼都にしても最初はそういうところを持っていたんですけど、彼が成長したのは話し合いをしたら、最後は『自分でも納得しました』って言えるようになったことですね。門脇は最初から率先してやったんですけど、礼都も最後になって、ようやくやれるようになった。
バッティングは天才的
――やらされる練習ではなく、やる練習ですね。
大久保 何度も言いますけど、選手が伸びるためには自分で必要だと思う練習を、自分からやれることだと思います。西武の時におかわり(中村剛也内野手)は30本のフルスイングノルマを与えると、その30本を終えてから、さらに30本、自分でやっていた。本気で振るわけですよ。だからホームラン王を獲るし、今でも必要な選手でいられる。
礼都には最初、『短く持って打とう』とか色々なことを言っても、やらなかったんです。そういう子は、打てなくても自分の方が正しいと思うことが、自分の安心感に繋がるんです。でも中山にお前が二軍に落ちなかったのはショートがいなかったからで、本来なら7番目か8番目の選手だぞ、と。ということは一軍にいないはずなんだよと。そういう話をしたら最初は悔しそうな顔をしていたけど、それが最後は『言っていたことが理解できました』と言葉に出せるようになった。