――ファームでは抜けた成績を残していて、コンタクト能力は非常に高い選手ですね。

大久保　バッティングは天才的なところがあります。タイミングを取るのもそこそこ上手い。礼都はタイミングを早く取りすぎるんですけど、その中で自分の間を探していける選手なんですよ、狂ったら狂いっ放しの選手じゃない。そこが1つの持ち味です。

大谷翔平がもたらした影響

――ただ一軍に来るとパワー不足が目につく選手という印象もありますが……。

大久保　パワーに関しては、シーズン中の試合前や試合後にウエイト場で姿を見るようになりました。岡本和真がWBCに行って、大谷翔平（投手、ロサンゼルス・ドジャース）から何を学んできたんだ？　と聞いたら『バッティングでテクニックっていうのは言い訳。パワーなんだ』と言われたらしいんですね。だから岡本も練習中からサプリ飲んで、ウエイトをガンガンやって、パワーつけるんだ、ってやっていた。で、ヘッドスピードの数値を気にして、打球速度がいくつで、打球角度は何度ですか？　ってね。

　それに中山なんかも乗っかってきているから、そこはよくいう相乗効果です。代表に入った選手たちがWBCで持ち帰ってきたいいものだと思いますし、それが礼都だけじゃなくチーム全体にも広がっていく。その中でも目の色が変わっているから、僕は今年、礼都がセカンドのレギュラーをとる可能性は十分にあると思っているんです。尚輝もウカウカできないですよね。

――最後になりますが、今までに出てきた選手以外で、特に大久保さんが今シーズン、期待する選手を一人だけ挙げるとすれば誰になるでしょう。

大久保　ん～……これちょっと期待するというのとは違うかもしれないですけど、僕は小林誠司の名前をあげたいですね。

小林誠司は「巨人の財産」

――小林……誠司……。意外な名前が出てきました。

大久保　僕はジャイアンツは彼を監督候補にした方がいいと思います。人間性、努力家の選手として僕が実際に知っている選手というのは、西武時代の秋山幸二さん（元ソフトバンク監督）か、栗山なんですけど、小林はひょっとしたらそれに比肩するかもしれないですよ。野球が大好きで練習する。あの歳でも練習を一番するし、周りの選手も小林が止めないから、引っ張られた、というところもあったんです。それを真顔でやる。後輩のこともガチで叱れる。僕らが言ったらパワハラだけど、あいつが言ったら、若い子がチンと締まるんですよ。だから僕は小林誠司は、巨人にとって財産だと思うんです。

――第3捕手としてほとんど出番はないですが、ベンチでの存在感がチームにいい影響を与えているということですね。

大久保　そう。試合中も応援するしね。で、あいつが昨シーズン、やっとヒットが1本出たんですよ。で、ベンチに戻ってきて『デーブさん、神様いました！』って。あの1本のヒットで感動できるヤツ！　よく耐えているよな、って。叩かれた世代だけど、大城（卓三）や岸田（行倫）にも色々教えていたし、見事だと思いますね。

――第3捕手の役割は難しいですからね。

大久保　キャッチャーで言うと山瀬（慎之助）もいいよ。世界に通じる肩です。ワンバンも捕れる。何が足りないかというとバッティングじゃないですか。僕は山瀬がレギュラーを取ったら、甲斐（拓也）みたいなキャッチャーになるんじゃないかと思いますね。甲斐はヤマを張って、グシャーって打つんですけど、あれよりはセンスがあると思いますけどね。キャッチャー脳もいいですし、紅白戦の時からこういうリードは嫌だなって言うリードをしていましたからね。山瀬も楽しみにしています。で、彼を育てるためにも、小林は必要だと思いますね。育てる人間は必要ですね。コーチじゃなくても、実戦の中で現役の人間が言うのは選手への響きが違いますから。だから巨人は小林を絶対に手放さない方がいいと思います。　

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