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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「命を懸ける」「お前らには火の玉になってもらう!」モウリーニョ解任→ローマ新監督は元若頭…デロッシ40歳に“笑わない闘将”の風格
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/01/23 17:01
EURO2012、当時29歳のデロッシ。ローマとアズーリで闘ったいぶし銀が、指揮官としてセリエAの戦場に戻ってきた
40歳の新米監督にとって、最大の懸念材料はやはり経験不足だ。
4年前まで現役プレーヤーだった新米指揮官のトップチーム指導経験は、2年前にセリエBのSPALで途中登板した5カ月間だけ。しかも、任期中の17試合にわずか3勝しかできず、シーズン終了を待たずに解任の憂目に遭った。
ミラノのスポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「いかにデロッシが古巣を愛し、またファンから愛されたアイドルOBであろうと今後はあくまで一人の指導者として評価されるべきだ」と、首都ローマで沸騰する新監督フィーバーに釘を刺す。
モウリーニョの後釜はデロッシ以外いなかったワケ
そもそも現実問題として、前任者モウリーニョの後任はデロッシ以外になり手がいなかった。
経営者であるフリードキン一家は、来季からのチームの抜本的改革を望んでいる。世界的名将モウリーニョですら逃したリーグ4強入りがノルマなのだから、尻込みしても当然だ。
噂されている名将アントニオ・コンテ(元トッテナム監督)はシーズン途中からの“後始末”など絶対に引き受けるはずがないし、評価急上昇中のチアゴ・モッタ(現ボローニャ監督)もシーズン中で引き抜きは不可能。
前任者モウリーニョは外様の外国人監督でありながら、ロマニスタから熱烈支持された。ヴェローナ戦では惜別と感謝を告げる巨大横断幕も掲げられた。誰であろうとその後釜に就けば、どううまくやっても何かしらの批判は免れない。
おまけに戦力強化の責任者として指揮官と一蓮托生であるべきSD(スポーツ・ディレクター)のチアゴ・ピントは今冬の移籍市場終了後、2月3日限りで退任することが決まっている。よしんば後任が早急に来ても、敏腕OBでもない限りローマのクラブ土壌を理解するだけで半年はかかるだろう。
カペッロ体制、懐かしの「ゼロトップ」時代も…
現場を走らせる両輪の片方がいない状態で、フィオレンティーナやアタランタ、ボローニャにラツィオといったライバルたちと今後の鍔迫り合いを乗り切らねばならないのだから、新監督にかかる負担は想像を絶する。
しかも契約内容は6月までの“つなぎ役”が前提で来シーズンの保証はない。デロッシは文字通り、火中の栗を拾ったのだ。