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「結婚するの? しないの?」“5年生存率50%”以下の難病から復帰したプロスノーボーダーが恋人から突きつけられた条件「離婚届か、履歴書か…」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/01/26 11:02
難病を克服し、社会貢献活動に邁進する荒井daze善正氏
「俺は3年間スノーボードしかしていない。周りの出場者は会社勤めの人とかもいたから、ちょっとカッコいいところを見せようと思ったら予選落ちしちゃったんです。うわー、俺は3年間も何やってたんだろうと(笑)」
DAZEは自分の甘さに気づいた。
「会社まで辞めて始めたのに、それで満足しちゃってたんですよね。後悔しないように生きようと思っていると、人ってどんどん甘くなっちゃうものなんだなと。
毎日滑って『今日はこれだけやったからいいだろう』『よし、後悔しないぐらいやったぞ』って。そうじゃなくて、前日の自分を翌朝には後悔して生きようと思ったんです。どれだけ滑って、トレーニングしても、『なんでもう一本滑らなかったのか』『どうしてあれにトライしなかったんだろう』と考えるようになりました」
常に前の日の自分を更新していく。そんなふうに意識を変えると、技術はどんどん向上していった。予選落ちしたのと同じ会場の大会で1年後には優勝していた。ボードやウェアのスポンサーと契約を結ぶことができた。次第にフィルムクルーの一員として映像作品にも出演するようになった。口で言うだけのプロではない。自分が夢見ていたような、プロらしいスノーボーダーとしての階段をDAZEは着実に上っていった。
「思い描いていたことがどんどん実現していく。面白かったですね。憧れていた人と同じビデオに出て、20歳の頃に映像で見ていた先輩と滑って、大会に出ても知っている名前の人たちがいる。自分もここまで来られたんだと」
一方でプロとしての活動が定着してくると、ジレンマも覚えるようになった。
「せっかくいい雪が来ているのに行きたくもない試乗会に行かされたり、うまく滑れなくなって、スノーボードがすごくつまんなくなってたんですよ。スポンサー契約やお金をもらうための“仕事“になってたんですよね」
ようやく見つかったドナー
病魔がDAZEを襲ったのはちょうどそんな時期だった。