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「競技者として悔いなく死ねる」ノルディック複合・渡部暁斗がミラノで見せた“あきらめの美学”「いまはちゃんとアスリートです」第一人者の27年間
posted2026/03/01 11:01
今季限りの引退を表明している37歳の渡部暁斗。自身6度目となる最後の五輪はメダルなしに終わったが、その心中は晴れやかだったという
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Tsutomu Kishimoto/JMPA
大きな盛り上がりを見せたミラノ・コルティナ五輪。その大舞台を花道に、ノルディック複合の第一人者が今季で27年間の競技生活に幕を下ろす。銅メダルを獲得した北京五輪での意外な「不完全燃焼感」と闘いながらの4年間は、果たしてどんなものだったのだろうか?《NumberWebノンフィクション全2回の2回目/最初から読む》
渡部暁斗の妻・由梨恵さんも18年平昌五輪にフリースタイルスキー・ハーフパイプで出場したアスリートであった。早大スキー部時代からの付き合いとあって、競技にストイックに向き合う渡部の姿を誰よりもよく知っている。だからこそ、中途半端な言動を見過ごせなかったのだろう。
由梨恵さんは平昌五輪の翌シーズン限りで引退し、2020年11月に1人目、北京五輪後には2人目の子どもを出産。シーズンが始まれば渡部は半年近く遠征に出てしまうとあって、子育てでも大きな負担がかかっていた。
「競技者としても、父親としても中途半端」
渡部が父親としての役割を意識しなかったわけではない。むしろその逆だった。22-23シーズンの終盤戦、由梨恵さんが体調を崩した時には、シーズンを早めに切り上げて帰国したこともあった。
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ただ、父親としての自分の働きぶりに関しては、渡部自身は首をかしげる。
「最初の頃は、父親でありアスリートであるっていうところに寄せていかなきゃいけないと意識しすぎていました。『子育てアスリート』みたいな立場になってるけど、無理をしてそれになっている自分もいた。子育てもしながら、競技も両立できると言いつつ、競技者としても、父親としても中途半端。でもなんか俺は子育てしてるんだみたいなエゴもある。そういうよくわからない、すごくふわっとした存在でした」

