「部の子たちも僕の熱に応えてくれて、最後の5年目には駅伝でも激戦の京都府大会を抜けて、近畿大会まで連れて行ってくれました。この経験は本当に大きかったです。中学校の先生方の中にはいまも『南丹で頑張っていた難波先生なら……』と生徒に受験を勧めてくれる方もいらっしゃるそうで、この時諦めずにやってよかったなと今は思います」

　そして4年前の2020年、洛北高校へと赴任してきた。

「もし伸びたら上を目指そう」では、絶対に伸びない

　進学校という環境ゆえ、学業とのハイレベルな両立を求められる環境は、陸上競技の面だけで見れば決してプラスなことばかりではない。だが、難波の“自主・自律”に重心を置いた指導は、そんな校風とも見事にマッチした。

「特に今年の3年生なんかは顕著でしたけど、私が伝えたいことをストレートに吸収する能力がものすごくあるなというのは感じました。

　例えば、私はいつも『上（高いレベル）を見てやらないといけないよ』という話をするんです。『もし伸びたら上を目指そう』という考えじゃ絶対に伸びない。『自分の可能性を信じて、もっともっと意欲を出していかないと』と言うんですけど、なかなか実際には難しいことだとも思うんです。でも、洛北の子たちは“自分の可能性”を信じて素直に努力できる子が多いですね」

　難波が声をかけた世代が入学した2021年からは、京都府高校駅伝で5位→3位→2位と着実に順位を上げ、昨年は王者・洛南に冷や汗をかかせるところまでの成長を見せた。近畿大会でマークした2時間5分59秒という記録は、都大路でも入賞クラスのタイムだ。

「私の順大時代は駒大がとにかく強くて、そういう本当の強豪にチャレンジする時って、1つもミスをしないようにしないとダメなんです。大学4年時の自分を振り返ってみると、今思えば至らぬ点があって、だからこそ直前で防げたはずの故障をして、箱根の走りに繋がってしまったと思うんです。そんな経験を考えると、今後も生徒たちが強豪校に挑んでいくのであれば、最後は本当に細かなところへの意識が大事になってくると思います」

　主力だった3年生は卒業するものの、2年生にも実力派のランナーが多く残る洛北。来年の京都も都大路を賭けた戦いが熱を帯びることは間違いない。

　また、難波が本格的に指導した選手たちが、今年からは初めて大学陸上界へ活躍の場所を移して箱根路を目指すことになる。もしかすると数年後には――洛北高のOBたちが、箱根の一大勢力になっているかもしれない。

＜「洛北高校陸上部潜入ルポ」編とあわせてお読みください＞

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