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人的補償“和田毅パニック”のウラで…広島⇔オリックスでは「超意外な人選」ベテラン記者が「今年カープは“ドラ1”を2人獲得した」と語るワケ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/18 06:00
即戦力を獲得する印象が強い人的補償でカープが選んだのは、まさかの入団1年目の快腕だった
振り返ってみれば、2022年ドラフト・オリックス5位指名。
その年、指名された高校生投手では11番目の指名だったことに、私は当時からずっと「違和感」を抱き続けている。
斉藤優汰(広島1位・苫小牧中央高)、門別啓人(阪神2位・東海大札幌高)、斎藤響介(オリックス3位・盛岡中央高)ときて、その次あたりに「日高暖己」の名前があっても、ぜんぜんおかしくなかったと、今でも考えている。
昨秋のドラフト会議で、青山学院大・常広羽也斗投手を1位指名した広島カープ。日高暖己投手の移籍で、今年のカープは「ドラフト1位」を2人獲得したと、私は本気で思っている。
「そりゃあ、いつも試合に出ていたいからですよ」
「ウチに入学した頃は、ショートがやりたいって言って、なかなかピッチャーをやりたがらなくてですね。私は、間違いなくエースになれるヤツだと思ったんで、何度も何度もくどいて、やっとピッチャーやる気になってくれて」
どうして、そんなにピッチャーやりたくなかったんでしょう?
「そりゃあ、いつも試合に出ていたいからですよ」
笑って教えてくれた理由に、私は、もう一度、甲子園でマウンドに戻っていく凛とした後姿を思い出していた。
ダブルヘッダーの練習試合なら、第1試合に完投しても、自分から志願して、第2試合は野手で嬉しそうにフル出場していたという。
「とにかく、根っからの野球小僧。ここまで大きな故障もしてなくて、体も強いと思います。カープのカラーに合っているかもしれないですね。そうだといいんですが……」
投手・日高暖己、オリックスでは山本由伸投手がお手本だったと聞いている。そこにカープの森下暢仁、栗林良吏投手の熱と精度とマウンドの支配感を吸収できたとしたら――?
春のキャンプも、もうすぐだ。
本物のドラフト1位・常広投手との「本気の闘い」が、日南で、沖縄で、待っている。