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「人的補償の素晴らしさも、もっと知ってほしい」巨人→中日移籍の当人が18年越しに明かした“プロテクト外”の本音〈FA制度を考える〉
posted2024/01/17 11:02
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
JIJI PRESS
木枯らしが吹くころ、野球界で頻出する四文字熟語がある。「人的補償」。FA宣言し、移籍した選手の旧所属チームでの年俸順により、移籍先の球団は金銭もしくは金銭プラス人的補償をする義務があり、その選択権は旧球団にある。ただし移籍先は規定に従って28名の選手はプロテクトすることができる。裏を返せば旧球団は、プロテクトされなかった選手からは自由に指名できる制度というわけだ。
発端は1月11日付の日刊スポーツだった。西武からFA宣言した山川穂高を獲得したソフトバンクへの人的補償として、西武が和田毅の獲得を決めたという情報を、1面で報じた。これが大きな波紋を呼んだ要因は、いくつもある。まずは最終的に不起訴となったとはいえ、山川は知人女性への強制性交で書類送検され、西武から処分を受けていたこと。そしてその人的補償が日米通算163勝で、ソフトバンクの大功労者である和田だったこと。さらに拍車をかけたのが、当日のうちに発表された人的補償は和田ではなく甲斐野央だったこと。
渦中の和田は…
当然、さまざまな憶測を呼んだ。日刊スポーツの報道通り西武が指名したのは和田だったが、何らかの事情で甲斐野に代わったのか。それとも和田も甲斐野も候補者に過ぎず、交渉過程をすっぱ抜かれてしまったのか。あるいは全くの誤報だったのか。当該球団がそのプロセスを明かすはずもなく、真相は霧の向こうにある。