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記者の質問で“不穏な会見”に…それでも“日本を苦しめた”トルシエ監督(68歳)に久保建英、中村敬斗が驚いた理由「圧倒された感じがあった」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2024/01/15 17:13
1月14日の日本ーベトナム戦で言葉を交わすトルシエ監督と森保監督
久保「アジアで1、2を争うポゼッション力が…」
久保のベトナム称賛はなお続き、「ポゼッションがしっかりしていた。練習しているのか分からないけど、中に入ってくる時のワンタッチ目の置きどころが上手いから余裕を持って日本のプレッシャーにも耐えられる。そこで失わないと思っているからああいうプレーをできる。見てみたいですね、どんな練習をしているのか。それくらい完成度が高い。アジアで1、2を争うポゼッション力があったのかなと思います」と結んだ。
トルシエ流のポゼッションについては「珍しかったですね」と指摘した。
「代わる代わる降りてきて、7番だけ逆サイドに置いて、逆のボランチの11番の選手も日本の右サイドに来ている時もあった。ポゼッション、ボールをつなぐことに対して、フォーメーションをバラしてでも繋いでくる。僕は日本代表の選手だから“良くない”と思って試合を見ていたけど、中立の立場の人は面白かったんじゃないですか」
トルシエは何人もの日本代表選手を驚かせた
楽しげな口調の久保の隣では、00年生まれの中村敬斗が、前半アディショナルタイムに決めた勝ち越しのスーパーゴールについて語りつつ、彼もまた、ベトナムを称えていた。00年はトルシエ監督が日本代表を率いてアジア杯優勝を飾った年だ。
「日本代表は良いサッカーをできて何連勝もしていますけど、その中でベトナムがこういう戦いをしてきた。僕らもすごく苦戦したし、難しいゲームだった。トルシエ監督は日本のことを多分よく知ってらっしゃると思うので良い相手だったなと思います」
1トップの先発に抜擢された01年生まれの細谷真大はベトナムの最終ラインのボールを繋ぐテクニックにほころびを作ることができず、「もう少し前から行って取れるかなと思っていましたけど、思っていた以上にパスを繋ぐのが上手かった。もともとビルドアップが上手いのは知っていましたが、その上をいっていた」と対応に苦慮していた。持ち味を出せないままハーフタイムでベンチに退いた細谷は、言葉に悔しさをにじませていた。
久保も中村も細谷もトルシエ監督が日本のテレビに連日映し出されていた時代を知るよしもない年齢であり、戦術の進歩が目覚ましいサッカー界においてトルシエ監督が彼らを驚かせたのは感慨深いものがある。日本でやったフラット3とベトナムでのポゼッションサッカーは、やり方こそまったく違えど、独自の戦術を追求するという、共通したパワーがあった。