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「(批判が)集中し過ぎだと思う」鈴木彩艶21歳を支える先輩・前川黛也の“声掛けの中身”…「TVには映らない」GK3人組の知られざる関係性
posted2024/01/26 17:02
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Getty Images
試合終了の笛が鳴ると同時に、日本チーム最年少21歳の守護神は一瞬だけ天を仰ぎ、腰に手を当てた。見つめる先には3-1の勝利に安堵するチームメートがいたが、GK鈴木彩艶はしばらくの間、表情を和らげることができなかった。
アジアカップ2023グループリーグ最終第3戦のインドネシア戦。日本は3-0とリードしていた後半アディショナルタイムの46分、自陣右サイドからのDFアルハンのロングスローを南野拓実がヘッドでクリアしようとしたものの、ボールがそれてファーサイドに流れ、フリーになったDFサンディ・ウォルシュに押し込まれた。
ボールウォッチャーになってフリーの選手をつくってしまった守備にはもちろん課題があるが、鈴木にとって防げないシュートではなかっただけに痛恨だった。
インドネシア戦直後、鈴木は前を向いていた
ベトナム戦、イラク戦で連続2失点を喫し、1勝1分で迎えていたこの試合。決勝トーナメントで波に乗っていくためにどうしても手にしたかった「クリーンシート」がするりとこぼれ落ち、悔しさがこみ上げていた。
だが、ミックスゾーンに来た時点で既に気持ちは前を向いていた。
「まずは勝ち切ることを目指していたので、そこを達成できたことはホッとしている。ロングボールの対応も含め、3試合の中でチームとして一番いいゲームが出来た。最後は止められれば一番だったが、勝利というところでは次につながる」
鈴木は落胆することなく堂々と答えた。そして、思いを込めてこう加えた。
「いろいろな背景がある中で、自信を持っていつも通りの自分の良さを出そうとした」
ドーハで立たされている試練に立ち向かっていくという決意が言葉からにじみ出ていた。
常に期待を受け続けてきた選手
3大会ぶり5度目の優勝を目指してカタールに乗り込む前、森保ジャパンは昨年6月15日のエルサルバドル戦から今年元日のタイ戦まで国際Aマッチ9連勝を飾っていた。FIFAランキングはアジア最高位の17位であり、優勝候補の筆頭。その中で、アジアカップの守護神として森保一監督の指名を受けたのが鈴木だった。
身長190センチ、体重93キロという恵まれた体格。浦和時代に同僚だったDF酒井宏樹が「足の速さはチームで1、2番」というように身体能力が高く、疑いのないポテンシャルを持つ大器は、年代別カテゴリーの頃からつねに飛び級で上の世代に抜擢されてきた。22年夏には浦和で第2GKだったにもかかわらず森保ジャパンのメンバーに選ばれ、E1選手権に出場した。つねに期待を受け続けてきたのが鈴木彩艶という選手だ。
ところが、今大会ではグループリーグ初戦のベトナム戦で誰も予想していなかったまさかの展開に見舞われた。日本は試合開始から11分で南野拓実のゴールで先制したものの、前半のうちにセットプレーから2点を失い、一時は1-2のビハインドとなったのだ。