プロ野球PRESSBACK NUMBER
PL学園の厳しい上下関係「時代が違うのか?」立浪和義が語っていた本音…同期生の野村弘樹「タツは朝早く起きてグラウンド周りのゴミを…」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/01/11 11:02
中日ファンから絶大な人気を集めていた現役時代の立浪和義
《プロ野球に入ることは大変で、入ってからはもっと大変だけれども、社会に出てお金を稼ぐためには、学生時代に訓練、修行を経験していないと、現代の若者はすぐに仕事が嫌で投げ出してしまう。世の中は理不尽なことだらけじゃないですか。最初はどんな仕事でも雑用ばかりですよね。その雑用の段階で会社を辞めてしまう。人生においては我慢しなければならない時期がある。上司に対する挨拶や目上の人に対する気の使い方……そういうのを学ぶためにスポーツがあると僕は思っています。
スポーツって、簡単には上手くならない。根気よく練習しないと、上達しない。その努力の過程が人間を成長させるんです。しかし、最近は小さなことでも問題となり、厳しい指導がやりにくい世の中になった。こちらは正しいことをやっているつもりでも、叩かれて、批判されてしまう。本来、団体競技である野球は助け合いのスポーツ。投手が困っていたら野手が助け、野手が打てなければ投手が抑える。そういう関係性を築くためには、最低限の厳しい指導は必要だと思う》
まるで2024年の自身を予見しているようでもある。ちなみにこの時、高校3年生で、中日に入団する前の根尾昂についても意見を求めていた。
《すごい身体能力で、学力もすごいと聞いている。そういう選手にはプロに入ってもらいたいですけど、エリート過ぎて心配な部分もある。素材はいいんだろうけど、野球しかない世界に入った時に、野球の頭というのが必要になる。それを持ち合わせているのかどうか……》
盟友・野村弘樹「とにかく観察力があった」
PL学園の同期生である野村弘樹(元横浜)は立浪のことを「天才肌でありながら、自分に厳しく、我慢強い」と評す。
「よく練習する選手だったと思います。だけど、タツがすごいのは、朝早く起きてグラウンドの周りのゴミを拾うとか、守備に入る時には必ず守備範囲の土をならすとか、そういう野球に取り組む姿勢の部分です。とにかく、目配り・気配りができて、観察力があった。爪切りを先輩に渡す時も、必ず柄の部分ひっくり返してすぐに使える状態で渡していた。監督さんからも『タツ』と呼ばれて可愛がられていた。自分や橋本(清)なんかは、監督さんから名前を呼ばれたことなんてない。いつも『てめえ! このやろー』でしたから(笑)」