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まさかの11連敗「お前はクビだ!」事件も…楽天・初代編成部長が見た“地獄”、初のドラフトは“ドタバタ指名”続き「彼はプロ志望届を出しているのか?」 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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posted2023/12/21 17:21

まさかの11連敗「お前はクビだ!」事件も…楽天・初代編成部長が見た“地獄”、初のドラフトは“ドタバタ指名”続き「彼はプロ志望届を出しているのか?」<Number Web> photograph by KYODO

2005年3月27日、楽天イーグルス1年目の開幕2戦目。ロッテに0対26と大敗した日のスコアボード

「指名したい選手がプロ志望届を出しているのかすらわからないことがありました。この選手がプロ志望届を出しているのか、という確認をその場で所属チームに電話しながら、ドラフトを進めたんです。ちなみに、平石洋介(現西武コーチ、元楽天監督)は田尾安志監督(当時)の大学の後輩でもあり、本人が楽天に行きたいという希望を持っていた。彼が所属していたトヨタ自動車に連絡したら『いや、彼は幹部候補生だからちょっと……』と言われましたが、本人の意思ですよと説得してドラフト7位で指名したという経緯もあります」

 ドタバタなドラフトを終え、キャンプも済み、いよいよ2005年シーズンの開幕戦が始まった。開幕投手を務めたのは近鉄のエースだった岩隈久志だ。

「我々としては岩隈が来てくれて万々歳でした。分配ドラフトの結果、彼はオリックスに分配されていましたが、本人の強い希望もあり、結果的に金銭トレードという形で楽天へ。開幕戦は、岩隈が力投してロッテに3対1で勝っちゃうんです」

 当時、年間100敗もありえると言われた楽天。そんな下馬評を覆すかのように、華々しいスタートを切ったのだ。喜びを爆発させる三木谷オーナーに広野は「まだ1試合目ですから。これからが試練の道ですよ」と伝えたという。

いきなり「お前はクビだ!」

 広野の言葉はすぐさま現実となる。翌日のロッテ戦では渡辺俊介を前に1安打に抑えられ、0対26という球史に残る大敗を喫したのだ。

「その後もボロボロと負け、結局4月は11連敗がありました。負けが二桁になろうかという試合は、オーナーと私とGMのマーティ(・キーナート)が一緒に観戦していたんです。負けが決まった後、マーティが『オーナー、大丈夫です。明日は絶対勝ちますよ』と、英語で調子のいいことを言っていました。余計なこと言わなくてもいいのに……と思ったら、案の定オーナーは激昂。オーナーはマーティに向かって『You are fired!(お前はクビだ!)』と宣告したんです」

 オーナーの激昂癖はそのときに始まったことではなかったという。試合に負けると当時の米田純球団代表には、オーナーからのお叱りの電話が入り、いわば負け試合の日常風景だった。

「マーティはうなだれたような表情をしていましたから、私は『いつものことだから気にするな』と励ましたんです。しかし、試合後、米田や島田亨球団社長(当時)がバタバタしている。何事だと聞いたら『オーナーの言ったことは本気らしいです。明日記者会見しろと言っています!』と。いやいや、カッとなったオーナーをなだめろよと言いたかったですが、そんなことをしたら彼らもクビになりますから、結局できなかった。それで、マーティがGMをクビになって、私が編成部長とGM代行を兼任することになったんです」

 後編では、GM代行も兼任することになった広野の壮絶なシーズンを見ていく。

<続く>

#3に続く
「大変です、田尾クビです!」楽天・初代編成部長が見た“地獄”「この球団にいたら、いつか死ぬな…」“突然すぎた”野村克也監督就任のウラ側

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