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まさかの11連敗「お前はクビだ!」事件も…楽天・初代編成部長が見た“地獄”、初のドラフトは“ドタバタ指名”続き「彼はプロ志望届を出しているのか?」
posted2023/12/21 17:21
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
KYODO
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“契約金1億円”で「そんなにかかるのか?」
一場靖弘は、明治大学のエースとして当時の六大学最速記録である154キロを計測。チームをリーグ完全優勝に導き、全日本大学野球選手権大会では完全試合を記録した六大学屈指の右腕だった。しかし、一場を自由枠での獲得を目指していた複数の球団による金銭の受け渡しが判明する。一連の金銭授受問題は、一場事件とも呼ばれ、巨人の渡邉恒雄オーナーをはじめ、阪神、横浜のオーナーが次々と辞任する大騒動になった。このような事件の影響で、各球団は一場から一斉に手を引いていたのだ。
「一場事件によって、それまで暗黙の了解で行われてきたプロ球団による裏金が問題となりました。ただ、楽天は新球団だから、なにも後ろめたいことはありません。うちは彼を指名する権利と義務があったんです。『行き場のない彼を救えるのはうちだけですよ』と、私は三木谷浩史オーナーに直訴しました。オーナーは『いくらなんだ?』と聞いたので、私は『ドラ1なんで、契約金は1億、年俸は1000万以上、プラスしてインセンティブがいります』と答えました。『そんなにかかるのか?』とちょっとびっくりしてましたが、それだけの選手ですと説明し、一場を指名することになりました」
にもかかわらず、後日、三木谷オーナーは「ダルビッシュはどうか」と言い出したという。彼はすでに日ハムの指名で決まっていたため、広野は「どうしてもというなら、5億円の予算があれば崩せるかもしれません」と提案。さすがにそんな金は出ず、予定通り一場の1位指名に落ち着いたという。
ドタバタ指名「彼はプロ志望届を出しているのか?」
こうした広野の大車輪の働きをもってしても、ドラフト会議までの準備期間はあまりに短かった。そのため当日の楽天のテーブルは大忙しだったという。