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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「阪神に指名されたのは運命かもしれない」人生が激変…大竹耕太郎(28歳)が“現役ドラフト成功例”になった納得の理由〈オフは結婚&ハワイ旅行〉
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph bySankei Shimbun
posted2023/12/19 11:02
このオフ、結婚も発表した阪神・大竹耕太郎(28歳)。「街で声をかけられることが増えた」と、大車輪の活躍を振り返った
阪神に指名された、と聞かされたのは石川とのランチを終えてからである。すぐにチームメートの和田毅に連絡した。大竹が師と仰ぎ、自主トレも一緒に行ってきた早稲田大の先輩は率直な思いを口にした。
「悔しいなあ……」
そして、言葉を継いだ。
「でも、岡田さんに監督が代わるタイミングで、阪神に行くというのは、そういう運命なのかもしれないと思って、また、頑張れよ」
同じ左投手で、プロ通算150勝の兄貴分は、ずっと背中を追う存在だった。細身なのに大食漢であることに驚かされた。長年、勝ち続ける秘訣を見た気がした。大竹も倣うと、75㎏だった体重は92㎏に増えた。恩人の励ましに前を向けた。
「必要とされていないのは悔しいことですし、それだけ力がないという気持ちがあったんです。でも、阪神に必要とされるということは嬉しいことだと思えました」
期せずして、同じ日に球界を代表する2人のベテラン投手から後押しされたことで現役ドラフトは変わるためのチャンスなのだととらえた。
「コイツ、使えるのかな」という視線
阪神は大竹を現役ドラフトのリストアップ最上位に位置づけていた。ソフトバンクが誇る豊富な陣容の投手陣のなかでは出番に恵まれないが、二軍戦で抑えられてきた相手である。緩急の投球術はセ・リーグが相手なら通用するという評価だった。指名順が3番目と早かったことも幸いし、まだ市場に残っていた大竹を迷わず指名した。その日、監督に就いて間もない岡田彰布はABCラジオでこんな期待を寄せている。
『左、先発できるというのがあるので、ちょっとまだチャンスがありそうだしね』
阪神は先発陣の頭数こそ揃えていたが、左投手は手薄だった。計算が立つのはプロ入り後の2年間で19勝を挙げた伊藤将司だけ。ベテランでセットアッパーの岩貞祐太に先発再転向プランが浮上するなど“ウイークポイント”になっており、先発要員と見込んで大竹に白羽の矢が立った。
大竹は「『コイツ、使えるのかな』という視線はめちゃめちゃ感じていたので第一印象はすごく大事にしました。キャンプインから100%でいけるように準備しました」と振り返る。2月の実戦は3試合9イニングを無失点。安定感抜群の内容で、春先から先発陣の一角に食い込んだ。