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出場機会がなく涙する日も…川崎F一筋で139得点、小林悠“36歳の渇望”「ゴールが欲しい時は俺を使って」「残り10分でも5分でも関係ない」 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2023/12/08 11:01

出場機会がなく涙する日も…川崎F一筋で139得点、小林悠“36歳の渇望”「ゴールが欲しい時は俺を使って」「残り10分でも5分でも関係ない」<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

川崎フロンターレ・小林悠のロングインタビュー。36歳となった今も「試合に出れば絶対に点が取れるっていう自信がある」と断言する

 小林のJ1通算得点数は、あの三浦知良と並ぶ歴代7位の139得点。さらに途中出場で26ゴールという記録も持っている。途中出場におけるJ1最多得点は播戸竜二の27ゴールで、小林は歴代2位だ。交代で入っても驚異的な得点力を誇るスーパーサブなのである。

「自分がゴールを決める!」と言い聞かせながらアップで身体を追い込み、気持ちを奮い立たせる。アドレナリンが噴き出し、得点感覚が研ぎ澄まされる状態に仕上げて、自らをピッチに解き放つのだ。

「負けている展開や点が欲しいときはアドレナリンをガーッと出して、自分をハイに持っていってますから。みんなそうかもしれないですけど、誰よりもモチベーションを高めている自信はありますね。それは残り10分だろうが5分だろうが関係ないんです」

「ここは俺だろ!」無言のアピールに鬼木監督が…

 強すぎるゴールへの飢餓感が、チャンスそのものを引き寄せたこともある。

 10月20日に等々力競技場で行われた、第30節のアビスパ福岡戦でのことだった。66分、山岸祐也のゴールが決まり、川崎フロンターレは1対2と逆転されていた。

 鬼木監督は、バフェティンビ・ゴミス、宮代大聖、遠野大弥の3枚替えで巻き返そうとしていたが、福岡の守備は堅い。決定打が出せないまま時計の針が進んでいく。

 残す交代枠は2人。ベンチスタートだった小林は「俺を出してくれ! 決めるのは自分だ!」と心の中で強く念じながら、アップエリアでペースを上げていた。だが、投入を告げる声はかからない。

 75分を過ぎ、残りは約15分。まだスコアは動いていない。ここでコーチから呼ばれたのは、最終ラインの前で防波堤になれるアンカーのジョアン・シミッチだった。

 咄嗟に「ジョアンより俺だろ!」と、怒りにも似た感情が込み上げていた。すると諦めの悪いストライカーは意外な行動に出るのである。

 何食わぬ顔でアップのエリアからベンチに戻り、シミッチの隣で同じようにユニフォーム姿に着替え始めたのだ。交代の選択肢になるための悪あがきだった。コーチから呼ばれてはいないが、指揮官の視野に入ることで「いつでも行けますよ!」と無言のアピールを行ったのである。

 すると次の瞬間、信じられない出来事が起こる。鬼木監督から「悠も一緒に!」と声をかけられ、交代出場を促されたのである。

「……えっ、俺も出ていいの?」

 アピールした本人が一番目を丸くしていたが、現場は一分一秒を争っている状態だ。すぐにレガースを付けて準備する。78分、シミッチとともにピッチに降り立った。

【次ページ】 起死回生の同点弾で呼び込んだ“等々力劇場”

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