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「メンタル的に崩壊していた」ロッテ・小島和哉の心に響いた吉井監督の“珍問答”「ミカン畑とビートルズ」から生まれた深イイ言葉…その心は?〈2位躍進秘話〉 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2023/12/04 17:00

「メンタル的に崩壊していた」ロッテ・小島和哉の心に響いた吉井監督の“珍問答”「ミカン畑とビートルズ」から生まれた深イイ言葉…その心は?〈2位躍進秘話〉<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

今季は大一番の試合で頼りになる投球を見せた小島

「音楽に例えるなら楽譜を奇麗に弾いているだけの投球に感じる」

 吉井監督は悩める小島にそう告げた。そして続けた。

「音楽において時に、多少音が外れていても情熱をこめて勢いのある演奏の方が聞いている相手の心に響くことがある。それはピッチングも一緒だと思う」

 小島は本格的に楽器を奏でた経験はなかったが、この比喩はスッと心の奥深くまで入り込んでいった。どうしても完璧を目指していた。初回からストライクゾーンぎりぎりを狙うあまり自分を苦しめる投球が目立った。厳しいゾーンを狙えば、少し外れるとボールと判定されるリスクを伴う。おのずと球数は増えていく。

 時には大胆に投げることも大切――。指揮官の言葉が、その後の小島のピッチングを変えた。打てるものなら打ってみろ。ストライクゾーンを広く使い、投げ込んでいく投球に打者はまるで気後れしているかのようなスイングで凡打を重ねていった。10勝目を挙げた大一番の仙台の夜はまさにそうだった。気迫あふれる投球でテンポよくどんどん投げ込み、チームを勝利に導いた。

「ピアノはさすがに…」

 後日、小島の契約更改会見でのコメントを聞いた吉井監督は笑った。小島は「ピアノを弾く時」と口にしたが、「ワシはギターと言ったつもりやった。ピアノはさすがに音が外れると厳しい。ギターのイメージやった。伝わりにくかったかなあ」と頭をかいた。そしてこう続けた。

「もっと大胆な投手になって欲しいというのはずっと思っていたこと。慎重になりすぎてマウンドでの雰囲気まで窮屈になって、それが野手にも伝播していた。球数も増えるし守っている野手もキツイ。もっと大胆にズドドドーンと投げて欲しい。あとはボールに聞いてくれ、と言うような勇気。なにかいい例えはないかなあと思っていて考えていた時に中高生の時に聞いたり弾いたりしていたギターのことを思い出した」

 指揮官は野球少年ではあったが、音楽もこよなく愛していた。ビートルズ、松山千春、アリス、ARB。長渕剛のフォークソングも好きだった。レコードを聞いたり、ラジオを聞いたり。あまりにも好きで和歌山に住んでいた中学生時代、ミカン畑の収穫を手伝うバイトで稼いだお金でフォークギターを買った。

【次ページ】 いきなり「この馬を知っているか?」

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