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「メンタル的に崩壊していた」ロッテ・小島和哉の心に響いた吉井監督の“珍問答”「ミカン畑とビートルズ」から生まれた深イイ言葉…その心は?〈2位躍進秘話〉
posted2023/12/04 17:00
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Chiba Lotte Marines
契約更改後の会見に臨んだ小島和哉投手にメディアから質問が飛んだ。
「今年、一番印象に残っている試合を教えてください」
おそらく、質問をした記者も、そして会見場にいた誰もが、あの試合だと思ったはずだ。10月10日のイーグルス戦(楽天モバイル)。シーズン143試合目のラストゲームは、勝てば2位、負ければ4位という勝敗次第で天国と地獄の明暗がクッキリと分かれる大一番だった。先発のマウンドには開幕投手を務めた小島が上がった。
「最初も小島。最後も小島でいいんじゃないか」
吉井理人監督は重圧のかかるマウンドに背番号「14」を送り出す理由を問われ、そのように答えている。小島はその期待に応え7回を被安打6、無失点。10勝目を挙げ、チームをシーズン2位へと導いた。
しかし、である。誰もがその答えを待っていたなかで、小島は予想を覆す回答を口にした。
「試合日は記憶にないのですが9月のイーグルス戦です」
「6回3失点の登板」がなぜ?
とっさにどの試合を指しているのか、ピンと来た人はいなかったはずだ。それはZOZOマリンスタジアムで行われた9月12日のイーグルス戦だった。開幕から好調に首位戦線を戦っていたチームは、8月は負け越し、9月に入ってもこの試合まで2勝6敗と低空飛行を続けていた。流れを変えて欲しい、と指揮官が期待をこめて送り込んだ小島はしかし、初回からピンチを背負うなどピリッとしない投球をつづけた。
初回にマリーンズ打線が先制するも3回に追いつかれ、6回には2点を失い勝ち越された。6回を投げて106球3失点でマウンドを降りた。先発としての役割は果たしているものの、「小島はもっと出来る投手。こんなものではない」と思っている吉井監督は大いに不満だった。試合はその後、打線の奮起で勝利したが翌日の試合前、吉井監督と小島は話し合いの場を持った。その時の会話を小島は忘れられないと言い、だからこの試合が今年で一番印象深い、と明かしたのだった。