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「メンタル的に崩壊していた」ロッテ・小島和哉の心に響いた吉井監督の“珍問答”「ミカン畑とビートルズ」から生まれた深イイ言葉…その心は?〈2位躍進秘話〉
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2023/12/04 17:00
今季は大一番の試合で頼りになる投球を見せた小島
小島は本拠地で行われたホークスとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでも、勝てばファイナル進出、負ければ終わりという第3戦に先発した。初回から飛ばした。結局、6回3分の1を投げて球数96球で無失点。勝ち投手にこそならなかったが、その後、小島の魂の投球に刺激を受けたチームは延長戦を制し、パ・リーグ王者バファローズの待つ大阪への切符を手に入れた。
CSファイナルステージの出番は第5戦の予定だったが、しかし、マウンドに上がることは叶わなかった。チームは4戦して1勝3敗でファイナルステージ敗退が決まった。ファイナルステージ第4戦、勝てば翌試合での先発だった小島はその時、宿舎で登板に向けた治療を受けていた。最後の瞬間を映像で見届けると深く息をつき部屋の天井を見つめながら、2023年シーズンを振り返り、すべてが終わったことを悟った。
「投げたかった。全身の力が抜けていく感覚。色々あった一年が終わった。途中、苦しんだけど、最後にいい感覚を掴むことができていただけに投げたかった。今はこの感覚を来年に繋げないといけないという思い」
「ギターとツインターボ」を胸に
月日は流れ早いもので師走になった。小島はもう次の年に向けたチャレンジを始めている。
「来年は2位決定の試合ではなく優勝決定の試合で投げたい。優勝チームとしてクライマックスシリーズを戦い、日本シリーズに勝ちたい。例えで言うと半音外れても情熱と勢いでギターを弾いて観衆を魅了する、そんなピッチングしたいです。ああ、もちろんツインターボも忘れていませんよ」
小島はそう言って笑った。
吉井監督も来季に向けて忙しいオフを過ごしている。「身体は休んでいるけど、頭はいつも来年の事を考えている」と話す。暇を見つけては中高生の時と同じように自宅でギターを弾く。今、聞いてくれているのは2匹の愛猫。駐車場に捨てられていた雑種の猫を拾って育てた雄の黒猫と、もう一匹は雌のアメリカンショートヘアだ。言葉は通じないがきっと情熱は伝わっていると信じている。野球の事から離れられる大切な時間だ。
小島は2024年、4年連続となる規定投球回数到達と2年連続二桁勝利を目指している。ギターとツインターボの話を忘れず、1年間、勢いよく突っ走りチームを引っ張っていくつもりだ。そしてシーズンの最後には、いつも様々なアドバイスをくれる吉井監督を胴上げする。