猛牛のささやきBACK NUMBER
「もう全部がかわいかった」オリックス・若月健矢が語る“最強エース”山本由伸「捕手が僕じゃなかったらもっと…」女房役の苦悩と新たな夢「最後1年くらいは一緒に」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/11 11:03
第6戦で完投勝利し「若月さんのおかげですね」と女房役の肩を叩いた山本由伸(左)
山本が高卒1年目だった2017年8月20日のプロ初登板でマスクを被ったのも若月だった。2021年から3年連続で最優秀バッテリー賞を獲得し、ともにチームをリーグ3連覇へと引っ張ってきたエースがついに旅立つ。
「寂しいですよ。もうずーっと、かわいい頃から見てきたんでね。本当にかわいげがあるし、まあたまに悪態つくこともありますけど、そういう生意気なところも含めて、もう全部がかわいかった。かわいいのにスゴイっていう、またそのギャップがなー(笑)」
そう言って思い切り目尻を下げる。
新しい夢は「由伸が帰ってくるまで…」
どの球種も一級品でコントロールも抜群。リードする捕手としても楽しかったが、山本が投げる日は絶対に勝たなければいけないという重圧もあった。
「捕手が僕じゃなかったらもっといい成績を残せたんじゃないかなとか、いろいろ考えましたよ。ちょっときつかった部分もあります、由伸を捕るというのは。受けていて楽しいけど、いろんな感情がありますよね。でもノーヒットノーランもやったし、きつかったけど、楽しかったですね。たぶん大型契約を勝ち取るでしょうから、嬉しいというか、ホッとしているというか。もちろん由伸の力だけど、送り出せてホッとしています」
山本には「頑張ってよ」とだけ声をかけたという。
「もう頑張って、しか言えない(笑)。僕には想像がつかないことなんで。楽しみです。所属球団の、なんか Tシャツでも1枚くれたら嬉しい(笑)。でも、夢みたいなものはできますよね。『由伸が帰ってくるまで現役でいたいな』という、新しい夢は生まれました。いつか……。限界まで向こうでやってほしいけど、もし帰ってくるなら、最後1年ぐらいは一緒にやって終われたら最高ですね。なんか、そんな変な夢も考えちゃいます(笑)」
山本の海の向こうでの活躍と、新たな夢を活力に、その夢の前に横たわる現実にももちろん向き合う。
新たなエース育成へ「一緒に成長を」
山本に加え、今年11勝を挙げた山崎福也もFAで移籍する可能性があり、2人が抜けるとすれば合わせて約300イニング分を埋めなければならない。
「若いピッチャーはチャンスだと思いますから、東(晃平)とか、宮城(大弥)とか、(山下)舜平大もそうですけど、頑張ってほしいし、一緒に成長していけるように頑張りたいと思っています」
若月自身も今年8月に国内FA権を取得したが、早々に残留を表明した。新たなエースを育てていく上で、今年初めてゴールデングラブ賞にも輝いた若月の残留はオリックスにとって何よりの補強だ。