「代打、来るやろ」阪神・岡田彰布監督はオリックス・中嶋聡監督との読み合いを楽しんでいた？ 佐藤輝明、奇襲の二盗に湯浅京己投入の大博打！

「何とか達成できた、アレのアレを」

　阪神タイガースにとって「1985」が、ようやく過去になった。

　3勝3敗で迎えたオリックスとの日本シリーズ第7戦は9回に入っていた。監督の岡田彰布はベンチで涙を拭うしぐさをみせた。最後を飾ったのは、2アウトから登場した守護神の岩崎優だ。左翼への飛球が、この日、先制3ランを放っていたシェルドン・ノイジーのグラブに収まった。

　2023年11月5日、午後9時44分。

　38年ぶりの日本一を達成すると、当時、まだ誰も生まれていなかったナインの手で岡田が宙を舞う。万感の思いをかみしめた。

阪神タイガース38年ぶりの日本一に胴上げで宙をまう岡田彰布監督　©︎Hideki Sugiyama

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「27歳でね、前回の日本一の時は。長かったですね。選手で日本一を達成して、監督で日本一を達成できて、本当に幸せ。何とか達成できた、アレのアレを」

　59年ぶりの関西ダービーは互いの本拠地の最寄り駅を結ぶ路線の名から「阪神なんば線シリーズ」と称された。チームカラーも似ている。リーグ1位のチーム防御率を誇る投手力で守り勝つ野球である。一方の攻撃は対照的だ。固定した打順で臨む岡田に対し、オリックスの監督、中嶋聡は143試合で135通りのオーダーを組んだ。

「静の岡田」と「動の中嶋」の駆け引きに注目が集まり、拮抗した戦いを予想する声が多かった。

　第1戦で強烈な先制パンチを浴びせたのは阪神だった。3年連続でパ・リーグ投手4冠の山本由伸の前に、4回まで得点できなかったが、5回に大エースを崩した。

　先頭の佐藤輝明が中前打で出塁すると、ノイジーへの初球に盗塁を仕掛けた。頭から突っ込み、二塁を陥れる。

日本シリーズ第1戦で奇襲ともいえる二盗をヘッドスライディングで決めた佐藤輝明　©︎Naoya Sanuki

　その後に渡邉諒のタイムリーで先制。山本に息つく間も与えず、5安打を集中して4得点を挙げ、6回も勢いのまま3点を加えた。

「初球から行きよった」と思ったけどな

　エース攻略の突破口を開いた佐藤輝は「頭から行こうと。できるだけ早く走った方がいい。成功すると思って走りました」と振り返った。オリックスの捕手・若月健矢も「初球はまさか、でした。1回に中野（拓夢）選手の盗塁を刺していたし『なかなか走ってこられないはず』と思ってしまっていた。僕の慢心、過信がありました」と苦い表情だった。

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