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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ドラフトウラ話《西武6位指名》「なぜ“無名地方大学”の男が指名された?」記者が完全密着…現場は“ドタバタ”「テレビの生中継どうしよう…」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byNumber Web
posted2023/10/29 11:01
三重県伊勢市にある皇學館大から史上初のドラフト指名選手が誕生した
生中継も快諾、豪快スラッガーの“緻密な計算”
14時20分。インタビューを終える。ドラフト会議まで残り2時間半。
皇學館大学の「即席会見場」の設営も着々と進んでいた。聞けば、キー局の全国生中継も予定されているとのこと。
会場の様子を覗く、大学関係者の会話が耳に入る。
「すごい……やっぱライトがあると、雰囲気でるなぁ」
「出入り口、どっち側のドアを開放しようか」
「ここに並べた椅子は学生に座ってもらおう。となると記者さんをどうするか」
諸岡によれば「生中継」を実施するか否かも、直前まで悩んでいた。もっと言えば、村田が難色を示せば断る予定だった。
「テレビの担当の方から事前に説明いただきました。当日までドラフトの結果はわからない。指名されなかった場合、その様子も映してしまうことになると。そこで本人に相談すると、即答でした。『全然いいですよ』と。ここでプロに行けなくても、放送されることで世に村田の名前が知られるきっかけになる。先まで考えているんですね」
15時30分頃。ドラフト会議まで残り1時間半。
記者やスチールカメラマンの姿も見え始める。地元テレビ局の生中継を挟んだのち、16時40分に村田がひとり会見場に姿を現す。つづいて森本監督、新田均部長も着席。会見場の後方に設けられた4列の椅子には野球部の3、4年生が座った。
主役と目が合ったであろう野球部仲間が「俺、最後まで見ないで帰るよ!」と冗談を飛ばす。村田も笑いを堪えられない。そこから数分後、会見場の人々の視線はある1点に集まった。
中日の監督、立浪和義の登場シーンを映し出すテレビである。それはすなわち、ここ皇學館大学における「村田怜音のドラフト会議」の始まりだった。
〈つづく〉