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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ドラフトウラ話《西武6位指名》「なぜ“無名地方大学”の男が指名された?」記者が完全密着…現場は“ドタバタ”「テレビの生中継どうしよう…」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byNumber Web
posted2023/10/29 11:01
三重県伊勢市にある皇學館大から史上初のドラフト指名選手が誕生した
30kgの増量…その方法は「毎日お餅を食べる」
当たればどこまでも打球を飛ばす男がいる――。野球に詳しいライターが教えてくれた「皇學館大の村田怜音」はじつにユニークだった。身長196cm・体重110kgの巨体、推定飛距離150mの特大ホームランを放った怪力、中日で不動のレギュラーに成長した岡林勇希と幼馴染で仲良し……そして異色ともいえる高校と大学の進路決断である。いずれも全国的に知られる名門を選ばなかったのだ。
中学時代、軟式野球の全国大会に2度出場した村田のもとに「8校ほどの高校から勧誘があった」という。当時野球部の顧問が薦めてくれたこともあったが、最後は三重の公立校・相可を自ら選んだ。
「少しずつ、公立校も面白いかもなって思い始めたんですよね。あまりメンバーが揃いすぎていないチームもいいなって」
中学3年時ですでに身長は190cm。対して体重は70kgと「ガリガリだった」ため、夏から卒業までに30kg増量した。方法はシンプル。「毎日お餅を食べる。特に夜食べてすぐ寝てました」。
急激な増量のせいか、高校時代はケガに泣かされた期間が長かった。最高成績は県ベスト16。だが、9カ月の離脱期間中に徹底したランニングと筋トレによる下半身強化、そして高校2年時冬に「“最後の冬”と考えて徹底して素振りした」成果が出た。引退までの3カ月間で、毎試合、ほぼ1本ペースという本人もビックリのホームラン量産。スラッガーとしての才能が開花した瞬間だった。この時期から、プロ入りを明確な目標として掲げた。
そして、大学の進路である。村田の高校3年時、三重大会で解説を務めていた皇學館大学の森本進監督(65歳)に見出される。きっかけは右打者の村田がライトスタンドに放ったホームランだった。以下、森本監督の弁。
「ときめきました。居ても立っても居られなくなって、本人に会わせてもらった。ぜひうちに来てほしい、4年間一緒に野球をやりたいと。思いの丈を伝えましたね。でも内心は……来てもらえないだろうなと」