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ルメールのイクイノックスと武豊のドウデュース、「真の最強馬」はどちらなのか? 天皇賞・秋に“競馬史に残る名勝負”を期待する理由
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/10/28 17:02
国内外でGIを4連勝中のイクイノックス(左)か、ダービーで同馬を破ったドウデュースか。“最強”の座をかけて両雄が激突する
そのイクイノックスが、今回は、1週前追い切りに騎乗したルメールが「冷静で、乗りやすくなった。体もパンプアップして、何も心配していない」と太鼓判を捺すほどの出来になっている。
GI5連勝が現実味を帯びてきた。
武豊に「化け物かも」と言わしめたドウデュース
「竜」の天下統一に待ったをかける「虎」は、ダービーでの一騎討ちを制したドウデュース(牡4歳、父ハーツクライ、栗東・友道康夫厩舎)だ。イクイノックスとは、ダービー以来、約1年半ぶりの直接対決となる。対戦成績は1勝1敗の五分。1敗は、イクイノックスが2着だったのに対し、自身は3着に終わった皐月賞だ。
3連勝で朝日杯フューチュリティステークスを制するなど、早くから完成されていたイメージがあるが、古馬になってよさの出ることの多いハーツクライ産駒。追うときの武豊の肘の屈伸の速さを見てわかるように、スプリンターかと思うようなピッチ走法でありながら、2400mでもとてつもない強さを発揮し、ダービーを2分21秒9のレースレコードで完勝した。自身のダービー最多勝記録を「6」に伸ばした武は、道中、掛かりながらも最後まで凄まじい脚で伸び切ったこの馬を、「化け物かもしれない」と評した。
武の友人でもあり、「世界一の武豊ファン」を自認するキーファーズの松島正昭オーナーに、ノーザンファームのイヤリング(中間育成部門)で初めてドウデュースを見たときの印象を訊くと「可愛かったということだけです」と笑った。松島オーナーは、とにかく楽しい人で、1時間半ほどのインタビューのうち、1時間近く笑わされていたような感じだった。馬主になって10年も経たないうちに、「一国の宰相になるより難しい」とも言われているダービーオーナーになったのも納得できる、不思議な引きの強さがある。
松島オーナーの夢は「武君が凱旋門賞を勝つこと」だという。自分の馬でなくても、武に世界最高峰の頂を制してほしいと願っているのだ。夫人と同じ誕生日だというドウデュースで勝つことができれば、嬉しさは何百倍にもなるだろう。
昨年の凱旋門賞では重馬場に泣き19着に敗れたが、今年の初戦となった京都記念を3馬身半差で快勝。「本物のGIホースがGIIに出るとこういう勝ち方をする」という、かつて武がスーパークリークやメジロマックイーンで見せたような圧巻の走りだった。次走はドバイターフとなるはずだったが、現地入りしながら、左前肢跛行のため、無念の出走取消となった。