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ルメールのイクイノックスと武豊のドウデュース、「真の最強馬」はどちらなのか? 天皇賞・秋に“競馬史に残る名勝負”を期待する理由
posted2023/10/28 17:02
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
令和初の天覧競馬を制するのは、レーティング世界一の「天才」か。それとも、同じ世代のダービー馬か。
第168回天皇賞・秋(10月29日、東京芝2000m、3歳以上GI)は、まさに竜虎相搏つ、凄まじい一騎討ちになりそうだ。
ドバイも宝塚も、イクイノックスは万全ではなかった
昨年の二冠牝馬スターズオンアースが蹄の不安のため回避し、出走馬は僅か11頭。このレースが2000mに短縮された1984年以降で最少となった。これほどの少頭数となったのは、とてつもないパフォーマンスを見せてきた「竜虎」2頭に恐れをなし、勝ち目のない戦いを避けた陣営が多かったからだろう。
世界のホースマンを震撼させるほどの強さを見せつけ、レーティング世界一を維持している「竜」は、連覇を狙うイクイノックス(牡4歳、父キタサンブラック、美浦・木村哲也厩舎)である。
昨春のクラシックでは皐月賞と日本ダービーでともに2着と涙を呑むも、天皇賞・秋では逃げ粘るパンサラッサを上がり3ハロン32秒7の驚異的な末脚で差し切り、GIを初制覇。つづく有馬記念も、中団から勝負所で一気に進出する圧倒的なパフォーマンスで2馬身半差の勝利をおさめた。レース後のインタビューで、主戦騎手のクリストフ・ルメールが「アーモンドアイは……」と、自身がかつて騎乗した芝GI9勝馬と言い間違えるひと幕もあった。
今年の初戦となったドバイシーマクラシックは、スピードの違いでハナを切ると、直線ではほとんど追われず、最後は流すようにして世界の強豪を3馬身半切って捨てた。2着は、今年のキングジョージや凱旋門賞でも2着に入ったウエストオーバーである。筆者も現場にいたのだが、他国の関係者が呆然とするほどの、桁違いの走りだった。
さらに、帰国初戦の宝塚記念では、後方から豪快に抜け出し、GIを4連勝。まったく異なるレースぶりで恐ろしいほどの強さを見せてきたわけだが、木村調教師によると、ドバイでも、宝塚記念のときも、万全の状態ではなかったという。木村師が早くから「天才」と讃えていた“能力の絶対値の高さ”で結果を残してきたのだ。