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“大谷翔平ドラフト”83人の「11年後サバイバル率22.9%」藤浪晋太郎と鈴木誠也もMLB、宮崎敏郎や菅野智之ら“豪華同期”の裏にある非情さ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki(C),JIJI PRESS(L,R)
posted2023/10/27 11:04
宮崎敏郎、大谷翔平、藤浪晋太郎。彼らが指名された2012年のドラフト指名選手はどうなった?
読売:“1年浪人”で入団した菅野
〈読売ジャイアンツ〉
1位・菅野智之・投手23歳/東海大◎
2位・大累進・内野手22歳/道都大
3位・辻東倫・内野手18歳/菰野高
4位・公文克彦・投手20歳/大阪ガス
5位・坂口真規・内野手22歳/東海大
育成1位・田原啓吾・投手18歳/横浜高
育成2位・松冨倫・内野手22歳/別府大
前年、日本ハムが1位で強行指名するも入団を拒否した菅野は、この年伯父の原辰徳が監督の巨人が単独指名。以後、NPBを代表するエースとして最多勝3回、最優秀防御率4回、最多奪三振2回、MVP2回、沢村賞2回。4位の大阪ガス、公文は2016年トレードで日ハムに。左腕救援投手として活躍。2021年シーズン中に西武に移籍し、今年引退した。
日本ハム:大谷と同期で今季まで巨人にいたのは…
〈北海道日本ハムファイターズ〉
1位・大谷翔平・投手18歳/花巻東高◎
2位・森本龍弥・内野手18歳/高岡第一高
3位・鍵谷陽平・投手22歳/中央大
4位・宇佐美塁大・内野手18歳/広島工業高
5位・新垣勇人・投手27歳/東芝
6位・屋宜照悟・投手23歳/JX-ENEOS
7位・河野秀数・投手25歳/新日鉄住金広畑
花巻東の大谷翔平はドラフト前にMLB挑戦を宣言。ドラフト指名しないようNPB球団に呼び掛けたが、日本ハムが前年の菅野に続き強行指名し、この年に就任した栗山英樹監督らが『大谷翔平君 夢への道しるべ~日本スポーツにおける若年期海外進出の考察~』と題した企画書でプレゼンテーションをして大谷を説得。以後、二刀流として、最多勝、最優秀防御率1回、MVP1回。2018年にポスティングシステムでエンゼルスに移籍、今季は本塁打王に輝き、2度目のMVPも確実視されている。
3位の中央大・鍵谷は、救援投手として活躍。2018年シーズン中に巨人に移籍。セットアッパーで活躍したが、今オフ戦力外となった。
この年、プロ野球に進んだ83人のうち、11シーズン後の現在も現役を続行しているのは、現時点では19人、パーセンテージにすると22.9%に過ぎない(今年戦力外になった選手には、今後他球団への移籍が決まる可能性もある)。
一方で、MLBに移籍して活躍する選手が、大谷翔平、鈴木誠也、藤浪晋太郎と3人いる。11年の間に大きな差が広がったのだ。
楽天の則本昂大、ヤクルトの小川泰弘、ソフトバンクの東浜巨、巨人の菅野智之、そして日本ハムの大谷翔平とチームを背負って立つエースを輩出した年と言えるだろう。
来季は、この年高校でドラフト指名を受けた大谷翔平の世代が30歳になる。いよいよ「生き残り」を懸けた競争が佳境を迎える。