サッカーでは「ボールは友達」「ボールを動かせ。ボールは疲れない」などといった有名なフレーズがある。これらの言葉には〈ボールが主役〉という考え方がベースにある。しかし小野伸二の場合は、やっぱり〈プレーヤーこそが主役〉と言えるのかもしれない。
技術論を聞くなら、適任者はやはり風間八宏さんである。川崎フロンターレなどで相手の守備網を破壊する攻撃を作り上げ、現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めている。個人技術を解説する名手でもあり〈小野の巧さ〉について明快に解析してくれるはず。
風間さん、小野の凄みについて教えてくれませんか? そう聞くと、こんな答えが返ってきた。
「伸二の足は、完全にボールの性質を覚えちゃっている。どうなるとボールが止まるか、どうボールが飛んでいくか……あそこまでボールの性格を足で知っている選手はいないんだ」
そんな風間さんが初めて天才MFのプレーを直に見たのは、小野が清水商業に在籍していた頃。風間さんにとっての母校でもある清商を率いる名将・大瀧雅良からこんな風に切り出されたという。
「こんな巧い選手、見たことないだろう」
実際、小野のプレーには一瞬で分かるクオリティの高さがあった。
「俺が見た中・高校生ではダントツだなと感じたよ」
懐かしそうに語る風間さんの指導の土台には「止める蹴る」というサッカーに不可欠な動作の追求がある。その「止める蹴る」の観点から深掘りしてみる。
小野と言えば、ボールと足が磁石のN極とS極のようにピタッと吸いつくトラップを見せるが……風間さんは「止める」の原則として〈ボールと足の「点と点」を合わせることで、ボールを完全に静止させる〉と、自身の書籍などで説明している。
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