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31歳で早逝した偉大なセッター・藤井直伸が仲間に遺した情熱「藤井とじゃなかったら、できませんでした」「すごい度胸ですよ(笑)」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO
posted2023/10/02 11:30
東レアローズや日本代表でコンビを組んだ“最高の相棒”李博にトスをあげる藤井直伸。今年3月、胃がんで31歳早逝した
'13年に東レへ入団した李はもともとはアウトサイドヒッターだった。その後ミドルブロッカーに転向するも、当時はA、Cクイックしか打てず、出られないことを「悔しい」と感じる実力もなかった。個別練習を始めた当初も、当然ながら全く合わない。
「それまでそんな速いトスを打った経験がないので、体感で言えば150km。大谷翔平選手の投げたボールを至近距離でハードヒットするみたいな感覚です。ちょっとトスが低いと全部ネットにかかるし、少しでも入るのが遅れるとボールが僕の前を通過して行くのも、日常茶飯事でした」
何度も「無理です」と言おうとした。それでも言えなかった理由がある。
「藤井は絶対諦めないんです。藤井とじゃなかったら、できませんでした」
「すごい度胸ですよ(笑)」
変化が生じたのは半年が過ぎた頃。徐々に互いのタイミングがピタリと合い始めた。李に言わせると「待っているところに、藤井のトスが来る」感覚をつかみ、精度とスピードも増していく。少しずつ2人での出場機会も増え、試合でも藤井は多少パスが乱れても臆せず、むしろ積極的にミドルを使った。狙い通りの試合もあれば、自滅することもある。だが次の試合になればまた使う。持ち味とはいえそこまでやるか。驚きながら、篠田も楽しんでいた。
「すごい度胸ですよ(笑)。決まればいいけれど、合わなかったらダメージもデカい。今でこそBパスからクイックを使うセッターはいるけれど、当時は藤井ぐらいでした」
真骨頂とも言うべき試合が、'16年12月の天皇杯決勝だ。
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