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男子バレーまさかの逆転負け、連夜の“異変”はなぜ?「第3セットからまるで別のチーム」のナゾ… 石川祐希「もう負けられない」
posted2023/10/02 11:47
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
JIJI PRESS
エジプト戦を終えた直後のミックスゾーン、選手たちの足取りは重い。うつむき、涙を浮かべた選手もいた。2戦目で予期せぬ敗戦。しかも2セットを先取してからの逆転負けのショックを物語っていた。“
これが別の大会ならば、フルセットで敗れた場合に与えられる「1ポイント」を獲得したと、プラスにとらえることもできたかもしれない。だが、1勝、1ポイントの差が明暗を分ける五輪予選で、世界ランキング下位(エジプトは19位)のチームに敗れたという現実は、たかが1敗と言い切るのは少々困難だ。
銅メダルを獲得したネーションズリーグや、アウェイの地で金メダルを獲得したアジア選手権など好成績が続いたことに加え、個々が躍動して組織として連動するバレーは面白く、日を増すごとに期待は高まっていた。
筆者もその一人だ。男子バレー日本代表が話題になる機会が増えるたび、「今の日本代表は強い」「何より面白い」と言い続けてきたし、もちろん今も変わらずそう思っている。だからこそ、体育館を満員にするほどのエネルギーが満ち溢れていた。
これまで何度も突き付けられてきた“五輪予選の厳しさ”も打ち消し、「きっと行ける」とただ前向きに考えるほどに――。
悪夢再び、第3セットからの異変
エジプト戦の前日、大会初日のフィンランド戦から日本に異変の兆しがあった。
2セットを難なく先取した後、観る人の大半がそのままストレート勝ちを確信した。だがメンバーと戦術を変え、勝機を見出すためにサーブで攻め、崩れた状況からの攻撃を着実にブロックディフェンスで対応してきたフィンランドに2セットを奪い返された。それでも第5セットは小野寺太志のサーブや山内晶大のブロック、高橋藍のバックアタックで連続得点を挙げて、なんとか勝利を掴み取った。
この1勝でプレッシャーを打ち消した日本は、エジプト戦も、むしろ前日以上の展開で難なく2セットを先取した。「やっぱり日本代表は強いんだ」と抱く期待は確信に変わったと疑わずにいた。しかし、またもや第3、4セットを僅差で奪われ、ついに第5セットもエジプトに押し切られた。
まさかの逆転負け。悔しさを噛みしめた主将の石川祐希は少々早口になりながらも冷静に、前を見て言った。