
地道に努力を重ね、日本代表まで上りつめた希代の司令塔は、快進撃を続ける男子バレーの進化の象徴ともいえる存在だった。偉大なセッターが遺した功績、記憶は多くの人の心に残り続ける。
JR三島駅から徒歩で約10分。富士山が見える方向へ歩くと、東レアローズの体育館がある。玄関を入ると背番号21、藤井直伸の笑顔の等身大パネルが出迎える。
今にも「何の取材ですか?」と声が聞こえてきそうで、そこにメモリアルコーナーと書かれていることのほうが嘘のようだ。
「信じられないですよね。ここを通るたび、ふらっと現れそうだし、帰ってくるような気がしているんです」
GMの小林敦が初めて藤井を見たのは、小林が東レで監督を務めていた2013年。藤井は順天堂大の4年生で、やっとレギュラーをつかんだばかりのセッターだった。身長も高いわけではなく、手が長いわけでもない。Vリーグに入るセッターの多くは、下級生の頃からレギュラーで活躍する選手が多い中、藤井には全国大会での華々しい戦績もない。しかし小林は、当時から藤井に光るものを感じていたという。
「彼のトスワークにはストーリーと『俺はこういうトスを上げてチームを勝利に導くんだ』というフィロソフィーがあった。これはものになるという予感がありました」
ヘタクソだけど、クイックは光るものがあった。
かつての日本バレーでは「最後はエース勝負」と言われるのが常で、セッターに要求されるのは、いかにエースに決めさせられるか。必然的に攻撃パターンもレフトサイドが中心だったのに対し、藤井のトスワークは、ミドル、ライトが中心で常に相手の裏をかく。奇をてらっているようにも見えたが、その背景に揺らがぬ意図があることを小林は見抜いた。
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