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“最高の相棒”藤井直伸(30)が胃がんステージ4を公表「聞いた時は、自分は固まってしまった。でも…」東レ・李博に響いた言葉とは

posted2022/03/08 11:02

 
“最高の相棒”藤井直伸(30)が胃がんステージ4を公表「聞いた時は、自分は固まってしまった。でも…」東レ・李博に響いた言葉とは<Number Web> photograph by TORAY ARROWS

サブに回る機会が増えたが、チームを懸命に鼓舞する李博(15番)。「ともに頑張っている」ことを伝えるために坊主頭でコートに立った

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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TORAY ARROWS

 コートにはいなくとも、キャプテンがみんなを奮い立たせている。

 白熱した接戦に競り勝った東レアローズの選手たちの声を聞くと、そう感じずにはいられなかった。

 3月5日のV.LEAGUE DIVISION1パナソニックパンサーズ戦にセットカウント3-1で勝利した後、東レのミドルブロッカー高橋健太郎は言った。

「藤井さんの発表があった直後の試合で、本当に、こういうふうに現場にいなくても、これだけパワーをくれる彼のために頑張らなきゃいけないというチームの思いがあった。今日は絶対に勝つ、負けられない、1個も落とせないというものを、本当にチーム一丸となって体現できたので、その思いが彼に届けばいいなと思います」

 その6日前の2月27日、東京五輪代表セッターで、東レでは主将を務める藤井直伸が、自身のSNSで胃がんのステージ4と診断されたことを公表した。昨年末から目の不調を感じており、1月8日の試合を最後に、リーグには出場していなかった。なかなか原因がわからず、検査入院したところ、目の不調は癌が脳に転移している影響だとわかったという。

 チームが病名を知らされた時は、「ショックだった」と篠田歩監督も選手たちも沈痛な面持ちで振り返る。

 だが、もうみんな前を向いている。篠田監督は、「藤井自身が『闘う』と、『打ち勝ってきます』と言ってくれたので、僕はそれを信じて待つだけです」と語る。

「相談するときはいつも藤井さんだった」

 代表でも藤井とコンビを組んできた高橋は、試合後、密かに涙をぬぐった。

「僕は何か相談するのはいつも藤井さんだったし、藤井さんのトスを信頼して打っていた。藤井さんのトスじゃなくなってから、なかなかうまくスパイクを打てなかったので、藤井さんがいろいろと検査している間、『早く(試合に)出てくださいよ。何やってるんですか』と文句を言ったりしてしまって……。(癌だと)わかった時には本当に申し訳ないと思いました。

 だけど、彼はもう切り替えて、病気と闘っているので、僕たちが悲観して、いろんな場面で悲しむというのは、その段階はたぶん藤井さんはもう誰よりも先に超えていると思う。だから今は、闘っている藤井さんを応援したいし、僕たちがポジティブな存在になれればいいなと思っています」

 藤井に代わりコートキャプテンを務めたオポジットのパダル・クリスティアンも、「一番大事なのは、彼にポジティブなエネルギーを送ってあげること。彼の今の状況を考えたら、自分たちの問題なんてすごく小さなことで、その小さな問題を解決することはそんなに難しいことじゃない、と感じさせてくれる。彼はコートにいる時も、いない時も、すごくいろんな影響を与えてくれている」と話した。

「自分が内定選手の時から引っ張ってくれたのが藤井さんだったので、今度は自分が恩返ししたい。試合で勝つことが、自分のできること」と話すアウトサイドヒッターの富田将馬は、雄叫びをあげながら強烈なサーブを打ち込んで2本のエースを奪い、攻守の中心となってチームを牽引した。

 これまで藤井に活かされてきたスパイカー陣が、1年目のセッター真子康佑を盛り立て、3位以上によるファイナルステージ進出を争うパナソニックとの接戦に粘り勝った。

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