「その見解は合っていると思います。ネーションズリーグでもアジア選手権でも、実際そこまで力を出し切らずに戦った試合も当然あります。それも単純に自分の調子がどうこうではなく、周りを見て、ここはやっておこう、ここは自分がやらなくてもいいな、と判断していますね。逆に周りを見て、あまり状態が上がってきていないと思ったらいつも以上に集めて話す時もある。基本的に周りを見るようにしています」

　象徴的だったのがネーションズリーグ準々決勝のスロベニア戦と、3位決定戦のイタリア戦だ。

　スロベニアのサーブから始まった準々決勝、1本目をレシーブした石川はそのまま攻撃に入り、バックアタックを決めた。拮抗した展開が続く序盤、日本が抜け出すきっかけをつくったのも石川のサーブだった。印象的だったのは自身がベストパフォーマンスを発揮することはもちろん、相手に流れが傾きそうな場面では、個々に声をかけたり、コート内に選手を集めて話すシーンも多く見られたことだ。

石川祐希（いしかわ・ゆうき）／1995年12月11日、愛知県生まれ。星城高から中央大へ進学。在学中からイタリアでプレーし、卒業後はプロ選手に。21年東京五輪では29年ぶりとなるベスト8に、今夏のネーション図リーグでは銅メダルに貢献。2023-24シーズンもミラノでプレー。192cm、84kg  ©︎Asami Enomoto

「僕の中では何もしていないイメージ」

　石川はスロベニア戦で見せたその振る舞いを“あえて”の行動だった、と振り返る。

「予選ラウンドのリーグ戦は、チームのことを考えてプレーするというよりも自分にフォーカスしていました。それぐらい周りも調子がよかったし、僕がどうこうする必要はない。だから任せていました。むしろスロベニア戦の前までは、キャプテンとして何かしたか、と言えば僕の中では何もしていないイメージでしたね」

　理由は明確。石川は、先を見据えていたからだ。

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