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《独占告白》石川祐希に問う「男子バレー、強くなりましたか?」その答えにワクワクした…「だから今の石川はスゴいんです」の真意とは 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byAsami Enomoto

posted2023/09/22 17:02

《独占告白》石川祐希に問う「男子バレー、強くなりましたか?」その答えにワクワクした…「だから今の石川はスゴいんです」の真意とは<Number Web> photograph by Asami Enomoto

9月30日から始まる男子バレーW杯&パリ五輪予選に挑む日本代表の石川祐希。絶対エースとして、キャプテンとしてその意気込みを語った

「石川選手、ちょっとすごいよね」

 長年イタリアで揉まれる中で培った技術。特に相手ブロックをうまく見て、リバウンドを取り、ストレート側に出したり、あえてブロックの後ろに落としたり。唸らされるような巧さは常に進化し続けている。

 だが今は、そこに加えて“凄み”すら感じさせる。そう話すのは、'08年の北京五輪にも出場し、'19年のワールドカップでは石川と共に主軸として活躍後、'21年7月に引退発表した福澤達哉だ。今はセリエAや日本代表戦の解説も務め、石川を見続けている。福澤は、技術や身体といったわかりやすいものだけでなく、“プラスアルファ”の変化が大きいと指摘する。

「学生からプロになったばかりの頃は石川の矢印は常に自分へ向いていた。いい意味でも、悪い意味でも、自分がよければいいというタイプに見えました。でも今は違う。自分がよければOKではなく、自分が勝たせる、という意志を感じます。たとえば、ブラジルの(代表主将の)ブルーノ(・レゼンデ)、(元ポーランド代表主将のミハウ・)クビアク、彼らは選手としてのテクニックも確かに長けているけれど、一番すごいのはあいつがいたら、何とかしてくれると常に思わせる力があることなんです。どれだけ自分の調子が悪くても、チームを鼓舞し続けるし、最後の最後、試合を決める場面ではとんでもないサーブやスパイクを決め、チームを勝たせる。そういう選手たちの姿を世界トップのイタリアで目の当たりにして、勝つチーム、リーダーに何が必要かを学び、実践している。だから今の石川は、すごいんです」

キャプテンになって、変わった

 以前の身勝手さと、近年の変化。苦笑いを浮かべ、石川も認める。

「変わったとしたら、キャプテンになってからですね。僕は基本的にやらなきゃいけない時しかやらないタイプで、そうじゃない時は責任がないから、それほど力を発揮しないタイプだと自己分析していて(笑)。プロ選手としては、代表でも『まず自分のプレーだけはしっかりしておこう』と思ってはいました。だけどキャプテンになってからは、自分のことに加えてチームのことも見るようになった。性格的に白黒ハッキリさせたいので、誰に責任があるのか、これは誰がやらないといけないことなのかをきっちりしたいし、キャプテンである以上、責任を持ってやりたい。そこは確実に以前とは違うと思います」

 誤解を恐れず言えば、確かに石川は我が強い。時に扱いづらい選手にも見えた。たとえば中央大時代のインカレや、'18年の世界選手権。ラリーが続いた場面やここという勝負所で自身にトスが来なかったり、来ても十分な体勢で打ち切れず、相手ブロックに捕まると床を叩いて悔しがった。それは勝利のために自分が決められなかった、という悔しさではない。満足いく状態で自分のパフォーマンスを発揮できないことに苛立ちを見せていた。

石川が見せた“あえての”行動

 だが今は違う。矢印は自分に向けるのではなく、周り。常に100の力を持ちながらも状況によって80、ここは120、と自身でコントロールしているようにも見える。

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