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優勝本命だったソフトバンク“本当の誤算”…なぜオリックス独走に? 山本由伸から3勝、近藤健介らタレント揃いも…「あの12連敗から始まった」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/22 11:03
7月にまさかの12連敗…だがソフトバンクV逸の理由はほかにあった。
モイネロ離脱より大きい…本当の誤算
最初の異変は中継ぎの柱であるリバン・モイネロの離脱だった。今季も27試合登板で3勝0敗5セーブ13ホールド、防御率0.98と安定した活躍を見せ、主に8回のマウンドを任せられてきた左腕は7月5日からベンチを、同月8日に出場選手登録から外れた。当初は左肘の蓄積疲労とされたが、その後は左肘関節炎と診断。同月26日には手術を受けて今季復帰が絶望的となっていた。
継投で逃げ切って勝つ――それがソフトバンクの最も得意とする必勝パターンだ。その重要なピースが欠けたのは痛手だったに違いない。だがしかし、ソフトバンクは他球団をしのぐ巨大戦力の持ち主だ。現にリリーフ陣にはほかに力のある投手がいた。今季のオールスターゲームにも選出された津森宥紀や14年ドラフト1位右腕の松本裕樹がいる。ルーキーの大津亮介も一軍で通用するところを見せていた。“モイネロの代わり”を完ぺきに務め上げるのは難しくても、その穴をどうにか埋められるだけのメンツは揃っていたはずである。
もしくは、リリーフが苦しいときそれをカバーするのが先発陣の務めだ。1イニングでも多く投げられれば、ブルペン陣の負担を減らすことができる。
その意味では、本当の誤算はその先発陣にあった。そもそも開幕前から不安視されていたのだが、そのほころびがシーズンの進行とともにより明確となり、7月の大型連敗は負の連鎖の歯止めがちょうど利かなくなってしまったと考えるべきだろう。
浮き彫りになった「千賀滉大が抜けた穴」
チームが負の連鎖に陥ったとき、それを食い止めるだけの「大黒柱」が今年のホークスにはいなかった。
昨季までのソフトバンクには千賀滉大がいた。7年連続2桁勝利をマークし、その間の通算成績が83勝37敗と圧倒的な勝率も誇った。誰もが「エース」と認める存在だった。その実績を引っ提げて、右腕は米大リーグのニューヨーク・メッツに移籍した。そのぽっかり空いた穴を埋めきれなかった。
今季のQS達成率38.93%は12球団最下位。有原が「QS率78.6%」と貢献しているが、それを除けばさらに悪化するのだから深刻だ。加えて若手を積極起用したのならば救いもあるが、24歳以下で今季ここまで先発したのはスチュワートJr.(23歳/12試合)と松本晴(22歳/1試合)のみというのも寂しい。
近藤、柳田、中村…タレント揃うも
また、打線にも大きな課題があり、それを解決できないままだった。