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「焦りしか感じてなかった」藤田譲瑠チマ21歳が語る海外移籍の舞台裏…目に留まったベルギー戦、4年ぶりのオランダ戦〈パリ世代インタビュー〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/09/18 11:02
ベルギーの地でインタビューに応じてくれた藤田譲瑠チマ
20年シーズンにJ2のヴェルディで新人ながら41試合に出場し、センセーショナルなデビューを飾ったものの、その後のJ1での2年半は、コンスタントにピッチに立つことが叶わなかった。
徳島とマリノス時代に味わった悔しさ
とりわけ苦い思い出として譲瑠の胸を疼かせるのは、徳島ヴォルティスに引き抜かれた21年シーズンである。
開幕当初はレギュラーを張っていたが、ダニエル・ポヤトス監督が来日してしばらくした5月以降はサブに降格。シーズン終盤にポジションを奪い返したものの、思い描いたようなシーズンを送れなかった。
「途中から試合に出られなくなって、悔しさとか、練習中に態度に出ちゃって。紅白戦で自分たちサブ組が勝ったのにメンバーが変わらなくて『なんでだよ』とか。シーズン終了後、監督から『お前のああいう姿は見ていたよ』みたいな話をされて、もう、思い当たる節だらけで(苦笑)。試合に出られないときにどう過ごすのか、すごく学べたシーズンでしたね。練習前の準備もしっかりやるようになったし、自分の体と向き合って、エクササイズを始めたのもこの頃からなので」
王者・横浜F・マリノスにステップアップした22年は、6月にU23アジアカップに参戦すると、7月には日本代表に初選出され、E-1選手権にも出場する。
……と、ここまでは順調だったが、代表活動でチームを離れていた期間が影響したのか、連係を成熟させていった喜田拓也と渡辺皓太の前に、次第に出場機会を減らしてしまう。
その傾向は今シーズン、F・マリノスが新たな戦術を採用したことで拍車がかかった。
センターバックとボランチが近い距離でパス交換しながら、相手のプレスを引きつけてひっくり返す――三笘薫擁するブライトンを思わせるビルドアップにおいて、ボランチのふたりには絶妙な立ち位置と角度、ワンタッチでのパス交換が求められる。
阿吽の呼吸を築く喜田と渡辺のコンビに、譲瑠は割って入ることができなかった。
「ふたりの息はぴったりで、ふたりがいるからマリノスの結果があると言っても過言ではないくらい、バランスがすごくいい。このままだったら追い越せないだろうなって感じたし、環境を変えて、違うところで追い越したいっていう気持ちがありました」
次の目標を意識しながら継続して試合に出られれば
ベルギーでの飛躍を思い描く譲瑠の中にあるのは、確かな成功体験である。
ヴェルディユース時代は高校2年生までBチームの一員で、Aチームの練習中はグラウンドの隅に追いやられるという不遇を味わった。
だが、高校3年生になる直前に試合出場のチャンスを掴むと、そこから一気に駆け上がっていく。