――いわゆるマインドフルネス、ゾーンに入るという状態なんでしょうね。でも「忘れよう、忘れよう」としてしまうと、かえって無にはなれないですよね。

「そうなんです。ただただ、試合に集中し続けるだけなんですよ。もちろん、最初はそうあろうと意識していたけれど、今は本当に無意識です。練習でやっていた動きが、試合でも考えずに出せているということが多くなってきたので」

――その集中というのも、過去の集中とは違うのですか？

「違いますね。今までは自分で『集中しよう』と気持ちを持ってこないとできなかった。しっかりやらなきゃとか、集中しなくちゃとか……」

――ある種、暗示をかけるみたいな。

「そうそう。ルーティンをやったりしながら、試合に向けて集中を高めるみたいな段取りでしたね。でも今はルーティンも減りましたね。結局ルーティンを大切にしすぎると、それに縛られることもあるので。今は内側から自然と湧き出てくる感じです。でも、こういう自信を過信にしないように、常に自分の足元を見つめながらやっていきたいですね」

ルーティンをこなさずとも、無意識のうちに試合に没入できるようになったという　©Hiroki Watanabe/Getty Images

「一番大事なポジションを忘れているじゃないか！」

――ミレッGKコーチは「サッカーの試合において、GKの仕事は65パーセントを占めている」とも言っています。

「一番大事なポジションだと思います。でも、フォーメーションを説明するときって4-4-2とか3-5-2で、GKの1がいない。ジョアンも『一番大事なポジションを忘れているじゃないか！』ってよく言っていますよ（笑）。現代サッカーのトレンドですが、僕自身もGKは守備だけじゃなくて、攻撃の第一歩でもあると考えています。攻撃に転じる前にGKがしっかりと守るところから、つなぎひとつでゴールまで狙えるという意味で、勝敗を分ける面白いポジションだし、そういう見方をされるように自分たちが変えていかないとダメだなと」

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