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「ゴールマウスは存在しない」浦和レッズ・西川周作の“すべて”を変えた名GKコーチの教えとは?「ハイボールの処理が一番楽しいんです」

posted2023/09/18 11:05

 
「ゴールマウスは存在しない」浦和レッズ・西川周作の“すべて”を変えた名GKコーチの教えとは?「ハイボールの処理が一番楽しいんです」<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

今季のJ1で第27節まで全試合に先発し、12試合を無失点に抑えている西川周作。37歳にして迎えた“覚醒”の裏には、名GKコーチとの出会いがあった

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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Masashi Hara/Getty Images

2022年、30代半ばを迎えた浦和レッズの西川周作が出会ったのが、スペイン人GKコーチのジョアン・ミレッだった。「ゴールマウスは存在しない」「パンチングは片手で」――西川の証言から、ベテラン守護神を新たなフェーズへと引き上げた“名コーチの指導”に迫った。(全3回の2回目/#1#3へ)

「ゴールマウスは存在しない」の意味

 ジョアン・ミレッは過去のインタビューで、練習メニューをこなす「キーパー練習をする人」ではなく、トレーニングの理由を伝え、正しい技術アクションとはどういうものかを伝える「キーパーを準備する人」としてのGKコーチの役割を説いている。

 40年近い指導者としてのキャリアのなかで、彼はボールを止める技術の分析を通じて自らの理論を確立し、それを身につけるトレーニングを実践してきた。育成年代の選手だけでなく、シニアのプロ選手であっても、基礎から修正しなければならないことがあれば、それをやり直させる。そのうえで必要なのは、選手が抱く“納得感”だろう。曖昧な印象論ではなく、ロジックを組み立てた上で言語化する丁寧なコミュニケーションによって、ミレッは西川周作の新境地を開拓した。

◆◆◆

――ゴールキーパーの技術論は、見た目以上に繊細で、謎めいている印象があります。だからなのか、精神論や「ビッグセーブ」といった簡略化された評価が多い。でも、実際にはより複雑で具体的なディテールがある。

「ビッグセーブと褒めてもらえるシーンも、僕たちGKからすればシュートを打たれているわけだから、そこまで評価できることではないんですよ。それよりも、空中戦でクロスボールを奪ったり、シュートを打たれる前に飛び出していくといった仕事をしなくちゃいけない。なかなか日本ではそんなプレーが少ないように思います。そういうGKとしての仕事の本質みたいなことも、ジョアンが教えてくれました」

――初めてマヌエル・ノイアーを見たとき、コーナーキックやクロスボールをことごとくキャッチするプレーにしびれました。GKがキャッチしてしまえば、相手の攻撃は死にますから。味方にとって、最も安心できるプレーだなと。

「いわゆる“空間を閉じる”ということですね。僕も今、ハイボールの処理が一番楽しいんです(クロスキャッチ率は31.4%でリーグ1位/9月15日時点)。そういえば、ジョアンがよく『ゴールマウスは存在しない』というんですよ」

【次ページ】 ポジショニング、ステップ…覆されるセオリー

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