〈結局、故障ですね。開幕まで2週間くらいの時期に、今年は間違いなく3番目の捕手で一軍に入れそうだと思ったんですが、朝、起きたら肘が腫れていてぶっ壊れた。それを訴えたんですがコーチから「いい若いものが何を言ってるんだ」と言われて。

　山倉さんとか有田修三さんなどベテランの捕手の人はまだ寒いから投げないで、一・三塁のダブルスチール防止をやると、全部僕が投げた。それで本当に投げられなくなると、そのコーチから「なぜ、肘が痛いと王（貞治）監督に言わなかったんだ」と言われて。ああ、大人の世界って嫌だなあ、俺は絶対こういう風にならないぞって。よく考えてみると、今の僕の指導は、全部自分が経験した嫌だった体験にもとづいているんですね〉

落合さんに教えてもらった“2つの打撃のポイント”

　捕手を故障で断念し、ファームで内野手として再出発することとなった。

〈当時の須藤豊監督は「ファーストをやれ」と言ったのですが、できれば三塁に行きたかった。でも翌年から遊撃、三塁に行くなど全部やったんですね。吉村禎章選手が怪我したときには、外野も守りました。投手以外のポジションは全部網羅したんだけど、当時は嫌だった。僕だって一つのポジションを与えてもらえれば、もっとやれるんじゃないかと思って〉

　1987年に一軍に初昇格したものの、佐藤氏はユーティリティとしての起用にとどまった。

〈試合に出ないのに、ずっとベンチに置いておかれるんですよ。誰か怪我をした場合にそのポジションを守るために。つらかったですね。社会人に入ってスケールが大きくなったんですが、プロでまた小さな野球をするようになった。いっぺん小さな野球になじんでしまうと、スケールの大きな野球には戻れなくなるんですね。

　プロ野球では、いろんな人に会いました。落合博満さんにも教えてもらいました。落合さんは“体のラインを入れないこと”、それから“右の肘はおっぱいを包み込むように打つこと”の2つだと。同じ右打者でしたからわかりやすかったですね。でも、結局、怪我でアキレス腱がダメになって……〉

巨人時代の落合博満　©Keiji Ishikawa

横浜、オリックスからも声がかかったようですが

　1985年から94年まで10年間巨人に在籍し、一軍ではこのような成績だった。

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