プロ野球亭日乗BACK NUMBER

「ひょっとしたら…」広島カープ・新井貴浩監督が冴えまくってる！ CSファイナル進出を決めた“根拠あるギャンブル”「恐怖心はないっす」

posted2023/10/17 17:27

CSファーストステージで連勝し、ファイナル進出を決めた広島カープ・新井貴浩監督

text by

鷲田康Yasushi Washida

PROFILE

photograph by

KYODO

　今年のセ・リーグのペナントレースを振り返ると、11.5ゲーム差という最終成績以上に阪神と他の5チームとのチーム力の差を感じざるを得ない内容だった。

　先発投手陣にリリーフ、クローザーと投手陣の質量の豊富さ、そして昨年まではあれだけひ弱に感じた打線も、岡田彰布監督のタクトで1番から8番までが線としてつながり、粘っこい勝負強さを見せるようになった。今年に限って言えば、岡田阪神“一強”のシーズンであり、クライマックスシリーズ（CS）ファーストステージでどこが勝ち上がってきても、大きなアクシデントがない限り――例えば4番の大山悠輔内野手が離脱するとか――とても勝ち目はないだろうと思っていた。

　もちろんCSファーストステージが終わったいまでも、阪神の圧倒的優位に揺るぎはない。ただその中で「でもひょっとしてひょっとしたら……」と思わせる戦いを見せたのが、ファーストステージの広島だったのである。

　新井さん、いや新井貴浩監督、冴えまくっていました。

　DeNAを相手にした戦いでポイントとなったのは、やはり第1戦の8回、同点に追いついた場面であることに多くの野球ファンも異存はないだろう。

　マウンドはここまで赤ヘル打線を4安打1失点に抑え込んでいた左腕・東克樹投手。その東からこの回先頭のマット・デビッドソン内野手が四球を選ぶ。ここですかさず広島ベンチは代走に俊足の羽月隆太郎内野手を送った。これはセオリー通り。そして打席には“ピンチバンター”として矢野雅哉内野手が送られ、教科書通りに1死二塁とスコアリングポジションに走者を進めた。これもセオリー通りである。

　そして打席に1番のベテラン・菊池涼介内野手を迎える。

　その初球に羽月が三盗を決めたのだ。