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「パリ五輪出場決定」でも河村勇輝が感情を爆発させないワケは?…バスケW杯で世界が注目“身長172cmの司令塔”の見据える先
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2023/09/03 18:00
チーム最年少ながら随所での活躍を見せた22歳の河村。大舞台での急成長はなぜ生まれた…?
河村は同年代の友人よりもNBAの歴史に詳しかったため、福岡第一高校で寮生活をしていた時に、同級生がアイザイア・トーマスについての話をしているときに、話が食い違ってしまったことがある。
実は、NBAの歴史のなかで活躍したアイザイア・トーマスは他にもいて、同級生たちが話題にしていたのは175cmの低身長にもかかわらず、NBAで活躍した現在34歳の選手の方だったのだ。そのとき、河村は後進のアイザイア・トーマスについて知った。現在もNBAの映像をよく見る河村は、もちろん今では「2人目」のアイザイア・トーマスのすごさも理解している。
だから今大会、現34歳のアイザイア・トーマスが、172cmで世界の大男たちをきりきり舞いさせる河村について称賛してくれたことは素直に嬉しく思っている。
「すごく嬉しいですね。やはりあのサイズで、NBAの最前線で活躍されていた選手だと思うので。僕が目指すべき場所というか、人物だと思うし。プレースタイルは少し違いますが、それでもすごく嬉しいです」
冷静な河村も、自身の身長については思うところはあるという。
「やはり、このサイズでバスケットをするの、自分でいうのもなんですけど大変なので。でも、20cmや30cmの身長差だったり、何十cmのジャンプ力の差は、気持ちで埋められると僕は思っているので。『気持ちを強く持って戦っていければやれる!』ということを証明できた……かどうかわからないですけど。小さな子供たちが1人でも多く、『僕もバスケットを始めたいな』とか、日本のみなさんが生きる糧にしてくれればいいかなとは思っていたので。まずは勝利という結果で恩返しすることができて良かったなと思います」
W杯という舞台の後に河村が目指す先は…?
ただ、そんな風に自分を猛スピードで成長させてくれた舞台は、幕を下ろした。さみしい気持ちがないといえば嘘になる。
「さみしいですけど、どんな場所でも成長しようと思えばできると思うし。僕自身、怪我とか、まだまだ体作りもある」
そこまで話したあと、彼は力を込めた。
「自分の全盛期がいつなのかなんて決めたくないですけど、2、3年後には、もっと、もっと強くて、もっと、もっとスマートな選手になれる。そうなりたいと思っているので。そこに向けて、1年1年、積み重ねていきたいなと思います」
河村はかねてよりNBAを含めた海外挑戦の夢を口にしている。それがいつになるかはまだわからない。
ただ、自分のいる環境を、成長するための最高の舞台に変えられるのが河村というバスケットボーラーである。河村はこのW杯で見せた以上の希望と衝撃を、これからきっと、世界に見せつけていくはずだ。