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「目を真っ赤にして激怒した日も」渡邊雄太が“情熱的なリーダー”に進化するまで…アメリカで痛感した無力な自分、理想のキャプテンはスラダン仙道
posted2023/09/04 11:03
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
世界の強豪が集まるバスケットボールW杯で日本代表が劇的な形で3勝を挙げ、パリ五輪進出を決定――。まるでハリウッド映画のようなシナリオの中で、多くのキャストたちがそれぞれの形で役割を果たした。
チームMVPに相応しいジョシュ・ホーキンソンのゴール周辺でのプレーは、日本がこれまで持たなかった新たな武器となった。絶体絶命に見えたベネズエラ戦での大逆転勝利を手繰り寄せたチーム最年長のベテラン、比江島慎の大爆発は多くのファンの胸を打った。22歳デュオ、河村勇輝と富永啓生のプレーには勇気づけられるとともに、今後へのさらなる希望を抱かされた。
そして何より、チームの顔として様々な形で奮闘した渡邊雄太のリーダーシップに鼓舞されたファン、関係者は少なくなかったはずだ。
メディアの影響力をよく理解する渡邊雄太
「このチームでパリに行けなかった場合、僕はもう今回で代表活動は最後にしようと思っています。それくらい本当に本気で僕は今回の大会に臨んでいますし、強い気持ちを持って、ここにいるメンバー、一緒にずっと練習をしてきたメンバーと戦っていきたいと思っています」
スロベニアとの8月19日の強化試合後、ファンに向かってそうスピーチし、“進退をかけた戦い”と大きな話題を呼んだ。大会開始後も、スポークスマン的な立場で会見などに対応するだけでなく、コート上やゲーム中のハドルでも積極的に声を出す姿が頻繁にテレビ画面にも捉えられた。その統率力はコート外にも及び、25日のドイツ戦の際に沖縄アリーナに空席が目立った問題に関し、SNS上でコメントすることで一石を投じてみせた。
もともと渡邊はメディアの重要性と影響力をよく理解し、表に出すことを意識したコメントをあえて残すことも少なくない選手である。今回の様々な発言も、自分自身だけでなく、チームメイト、そしてファンをも鼓舞する意図があったに違いない。そこまで含め、キャプテンの富樫勇樹とともにコート内外でチームを引っ張った渡邊のリーダーシップは日本代表の成功に不可欠なものだったはずだ。