「外角のストライクゾーンいっぱいと、ボール1つ分外した出し入れをできるコントロールや投球術を持っています。審判のストライクゾーンも考えて投げているように感じます。あれだけの制球力を持つ高校生は、なかなかいません。狙って三振や併殺を取る投球や、ピンチでギアを上げるところにもセンスを感じる投手です。半年、1年前より直球のスピードが上がり、スライダーも球速と切れが増しています。沖縄尚学の先輩にあたるソフトバンクの東浜巨投手と重なります」

「今大会で最もワクワクさせてくれた」森煌誠

　3人目は徳島商・森煌誠投手。身長183センチ、体重89キロのがっちりとした体格から直球を軸に投球を組み立てる本格派だ。徳島大会は全5試合を1人で投げ抜いている。甲子園では初戦に強打の愛工大名電を5安打1失点に抑え、チームを勝利に導いた。最速147キロの直球と落差の大きいフォークを組み合わせて、奪三振を10個積み重ねている。中学では三塁手で投手歴が浅いところにも伸びしろがある。

　スカウトは森について「今大会で最もワクワクさせてくれた選手」と表現した。現時点での能力の高さに加えて、将来性に期待を寄せる。

「脱力した投球フォームから球威のある直球がくるので、打者は球速以上にスピードを感じます。直球を意識しているところにフォークやカーブを織り交ぜられると、打者は対応に苦労します。完投できるスタミナも魅力です。投球フォームや打者との駆け引きなど課題はありますが、まだまだ成長過程で、どんな投手になるのか楽しみが大きいです」

徳島商・森煌誠　©Nanae Suzuki

　甲子園という大舞台でスカウトの評価を上げた3人の投手。ただ、今秋のドラフトで指名される可能性は低い。湯田と東恩納は大学進学、森は社会人に進むとみられている。スカウトが本音を漏らす。

「現時点であれば、3人ともドラフトの中位や下位で指名できる可能性があります。しかし、順調に成長して3年後、4年後にプロ志望届を出せば、1位で競合するかもしれません。将来性を感じさせる選手はドラフト3位以下で指名して、自分の球団で育てて4年、5年後に一軍の戦力になってもらうのが理想ですが、本人の考えや希望がある以上、難しい部分があります」

今中慎二のようなストレートとカーブの黒木

　こうした中、今秋のドラフト候補で今大会の投球で評価を上げたのが神村学園の左腕・黒木陽琉投手。5試合全てに登板して防御率1.99とチームのベスト4進出の原動力となった。準決勝で敗れた仙台育英戦を除くと、わずか1失点と安定していた。

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