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甲子園の風BACK NUMBER
スカウトが本音で“甲子園野手ドラフト診断”「佐々木麟太郎はハッキリ評価が分かれる」…“世間に知られてない強肩ショート”とは
posted2023/08/28 11:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama/Nanae Suzuki
第105回全国高校野球選手権記念大会は慶応の優勝で幕を下ろした。高校野球ファンの次の関心は約2カ月後のドラフト会議へと移り、プロ野球のスカウトにとっては勝負の時を迎える。
スカウトは選手を長期に渡って追っている。1試合、1打席で評価が大きく変わるケースは、ほとんどない。ただ、ドラフト直前の大舞台となる夏の甲子園でリストアップした選手がどんなパフォーマンスを見せるのかは判断材料の1つになるという。
「一塁しか守れない選手は評価が低い」はホント?
今大会に出場したプロ注目選手に対して、スカウトは現時点でどのような評価をしているのか。まずは野球ファンの関心も高い、花巻東・佐々木麟太郎選手、広陵・真鍋慧選手、九州国際大付・佐倉侠史朗選手の3選手について、パ・リーグの球団スカウトに聞いた。この3人は「スラッガー」、「左打ち」、「一塁手」と共通点が多い。スカウトは最初に、ファンの一部から出ている「一塁しか守れない選手は評価が低い」という声を一蹴した。
「同じ打力なら当然、守備力や走力の高い選手の評価が高くなります。しかし、守備力が高くないことを理由に、将来的に一軍に定着できる打力があると評価する選手をドラフト候補から外す球団はないと思います。各球団が外国人を獲得するのは、守備力に目をつぶっても長打力に期待しているからです。それに、高校生の時点で一塁手しかできないというレッテルを貼るのは早すぎます」
スカウトは、佐々木、真鍋、佐倉の3選手が世代トップレベルの打力を持ち、プロで活躍する可能性が十分にあると話す。その中で、「球団によって評価が大きく割れるのではないか」と指摘する選手が花巻東・佐々木だ。
「佐々木選手のスイングスピードとパワーは規格外で、プロでもあのレベルに到達するのは至難の業です。素材としては間違いなくドラフト1位に値します。本塁打を40本、50本打てる可能性を感じさせる打者は、どの球団も魅力に感じます。一方、弱点がはっきりしています。まだ高校生ですし、今夏は体調も万全ではなかったようなので、課題はプロで克服すれば良いと思います。プラス面とマイナス面が分かりやすいからこそ、評価が分かれる選手と言えます」
麟太郎が抱える課題、真鍋の特徴とは
高校通算140本の本塁打を記録した佐々木のパワーは誰もが称賛するところ。だが、あるポイントには課題があるという。